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朝ドラヒロイン決定で要注目の黒島結菜 切なさ醸す『明け方の若者たち』に至るまで

著者:関口 裕子

周防監督から感嘆の声も…俳優として覚醒する機会だった『カツベン』

 黒島がヒロインを演じた『カツベン!』(2019)の共演者、渡辺えりもまた「アシガール」のファンだったという。さりげない一言だったが、演技に厳しいあの渡辺えりが……と驚いた。

 当時の黒島に欠けていたのはたぶん自己肯定力だ。俳優の仕事には答えがない。正解はないが、常に自身の体を通した結果を出し続けていかなければならない。自己肯定力がなければできない仕事とも言える。

『カツベン!』の撮影時、黒島は周防正行監督に「私、大丈夫ですか?」と確認したことがあった。黒島は「大丈夫だよ」、または「こうしたら?」という答えを期待したそうだが、返ってきた答えは「大丈夫にするから」だった。

 それは「ダメでも監督の仕事として大丈夫にする」と暗にダメ出しを意味する答えだったのかもしれないが、「大丈夫にするから思い切りやりなさい」という優しさでもあったと思う。

 いずれにしてもこのことは黒島にとってかなりインパクトだったのだろう。さまざまなインタビューで、このことは自分をプロの俳優として覚醒させたという意味合いの発言をしている。

 ただし、黒島の知らない“続き”がある。テイクを重ね、途中で休憩も入れて撮影されたこのカット。OKとなった最後のテイクに「カット!」をかけた周防監督は、「ほうっ!」と感嘆の声を漏らしていた。

映画最新作で醸す切なさには自身の経験に由来する?

(c)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会
(c)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

 現在の黒島は、「手応えはまだ分からないけれど、仕事がより好きになりました。演じることは楽しいし、もっとやりたい。ものづくりの現場が好きで、終わってから、みんなで作品の良さを分かち合うのも好きですね」と語っている。

 2015年、芸能界以外の世界を知る意味で、日本大学芸術学部写真学科に進学。さまざまな撮影技法を学んだが、仕事との両立が難しくなり、2019年には悩んだ末に大学を辞めた。

 その間に、NHK大河ドラマ初出演となる「花燃ゆ」、連続ドラマに初主演した「時をかける少女」(2016・日本テレビ系)、「アシガール」、映画ではヒロインを演じた『サクラダリセット』(2018)、主演した『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』(2018)、『十二人の死にたい子どもたち』(2019)、『カツベン!』の撮影を乗り越えた。

 何としても両立させようと悩んだ学生生活は、『明け方の若者たち』の大学院生役に着地した。映画の中で明け方の街を走る〈彼女〉が醸す切なさには、彼女自身の経験に由来するものも混じっているように思う。

 2022年春に始まるNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」(2022)はヒロインで臨む。舞台は沖縄。撮影はすでに始まっている。

 
『明け方の若者たち』12月31日(金)全国ロードショ- 配給:パルコ (c)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。

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