育児・家族

認知症の父に母が暴言… 警察からの電話に愕然 アラフィフ娘が感じた「介護する側」にも大切なこと

著者:和栗 恵

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介護者のケアやサポート 他の家族に課された大きな課題

「このところ、夜、心臓がバクバクしてよく眠れないのよ……」
「もうお父さんの顔を見るのも辛い。離婚してもいいでしょう?」
「まったく食欲がなくて、ごはんが食べられなくて……」

 父親が認知症にかかり、介護の負担がかかるようになった母から、これまでもこんな言葉を聞くことがありました。また、警察の方の言う通り、「アンタなんて、何もできないくせに!」と、父に対して暴言を吐きかける母の姿を見ることもありました。しかし、もともと母は気が強く大げさに話をしたり、言葉も強かったため、そこまで気にすることなくスルーしてしまっていたのです。

 でも、今回こうして他人から指摘されると、グサリと強く胸に刺さるもの。出張から帰るやいなや実家に行き、父はもちろんですが、じっくりと母を相手にする時間を持ってみました。すると分かったのは、母は認知症ではなく、「介護うつ」になっているのでは? ということ。食欲不振、睡眠障害、疲労感、倦怠感、焦燥感、思考障害――うつ症状でありがちな症状が、母の状態にとてもよく当てはまっていたのです。

 父親に対する不満、将来への不安、いつまで続くか分からない、介護への恐怖……。離れて暮らしている私には、母の抱いている気持ちは計り知れません。しかし、母親まで病を患ってしまっては、なすすべがなくなってしまいます。

 両親を離婚させ、私の住む地域に父親を引き取るべきだろうか? そんなこともぼんやりと考えましたが、都会の狭いワンルームで夫と暮らしている私には、どうにも現実的ではありません。少ない年金で入れる介護施設に入所できる日までは、どうしても母親の手が必要なのです。

 そこで私にできることを考えました。その答えはただひとつ。母親のケアを手厚くする、ということでした。

・実家を訪れたら、まず真っ先に母の元に行き、愚痴や文句をじっくりと聞く
・おいしいスイーツやお惣菜などの手土産を持参して食べさせ、リラックスさせる

 私にできることなど、この程度のことなのですが、これらをすべて、「笑顔」で行うことを心掛けました。

介護の“要”となる母を発散させる方法を模索

 介護うつを解消するためには、本格的なうつ病を発症する前に食い止める必要があるといいます。そのために大切なことを調べた結果「精神的ストレスや、身体的疲労を軽減すること」が何より大切であることを知りました。

 “うつは、心の電池切れ”とも呼ばれますが、母がうつから回復するために必要なのは、母自身が、心にエネルギーを蓄えること。周囲が一緒になって悲愴感を漂わせてしまってはならないのです。

 そこで、ひと通り母の愚痴を聞いた後は、私自身が楽しく感じたこと、おもしろいと思ったことなどを、元気よく話しかけました。そういえばあんなことがあった、こんなことがあった、こんなヘンなものを食べた……。中身は本当にくだらないことですが、笑顔で元気よく話を続けたのです。

 すると、それまで表情が暗く、口をへの字に曲げて泣いていた母が、普段の母のようにケラケラと明るく笑ってくれたのです。その笑顔を見たところで、母にすかさず伝えました。

・実は、警察の方から「母の状態が危険だ」、と言われたこと
・このままでは共倒れになりかねないこと
・でも、実際のところ、父の介護は母に頼らなければならない部分が多いこと
・できる限りは手伝うので、父のことはある程度割り切り、好きに生活をしてほしいこと
・そのため、父親との接点は必要最低限にし、どうしてもイヤだと思ったときには、こちらへSOSを発してほしいこと

 笑いの効果だったのでしょうか。母は私の話を聞いた後、笑顔で言いました。

「そうね。私自身が不幸にならないように、笑顔でいられるようにするわ!」

「温かく見守る」にはそれをキープするエネルギーが必要

 現在母は、父の食事の世話や家の中の掃除など最低限のことはしているものの、空いた時間はお友達の家に遊びに行ったり出かけたりしています。父から私宛に「お母さんはどこに行った?」という電話が多くかかるようになりましたが(笑)、「近所に行ってるんじゃない?」で軽くスルー。実家の近所の方や母のお友達の厚意もあってか、母にだいぶ笑顔が戻ってきました。

 今回のことで、両親はもちろんですが、それを見守る私自身もしっかりと暮らし、楽しく生き、周囲にエネルギーをバラ撒ける人間でいなければならないのだと、改めて実感する出来事でもありました。

 文頭に引用した厚生労働省の言葉にあるように、「温かく見守る」ためには、「温かさ」をキープするだけのエネルギーが、私たち、介護をする側の人間にも必要なのです。

 まだまだ、私たち家族に問題は山積みですが……いずれにしても、こうなった以上、ジタバタしたり、悲観したりしてもしかたのないこと。私も、そして母も、父も、出来ることから一つひとつ、片付けていくしかありませんから!

(和栗 恵)