恋愛・夫婦

既婚女性だけがまとう シングル女性が金を積んでも手に入らない“生活臭”という香り

著者:小林 久乃

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それぞれに良さがある独身と既婚、両者には確かな違いが存在すると筆者は考える(写真はイメージ)【写真:写真AC】
それぞれに良さがある独身と既婚、両者には確かな違いが存在すると筆者は考える(写真はイメージ)【写真:写真AC】

独身が醸し出そうとすると火傷を招く“生活臭”の定義とは?

 10年くらい前からだろうか。結婚した女性タレントさんや女優さんが個人的に付き人やシッターさんを雇って、撮影現場にお子さんを連れてくることが増えた。そしてメイクをして、衣装を着て、スイッチを入れてカメラの前に立つ。でもどんな容姿端麗な人でも、やはりフワンと隠しきれない“生活臭”がする。でも何かが臭ってくるわけではない。

 香水の香り方になぞらえてみよう。まずは香水の第一印象と言われる「トップノート」。これは誰にでも出てしまう、「手のシワに出る実年齢」。美容家さんでも、毎日家族のために家事をしていれば、どうしても出てしまう。同じラインに髪の毛の艶もある。

 そして香水の特徴を出すと言われる「ミドルノート」。これは「話す速度」に現れる。既婚者は常々、誰かに合わせて生活している癖のおかげでまず聞く、そしてゆっくりと話す。独身者は、公私ともども自分の身を守るためなのか、アピールなのかまず自分が話す。抑揚もかなりオーバー気味なのだ。

 この様子を表す光景に出会ったことがある。1人で人気の中華料理屋に入店した時、相席になった向かいの女性2人の会話だ。終始、眉間にシワを寄せて仕事の愚痴を話しているのが、ネイリストの独身だった。

「もうさ、休憩も取れないわけ。タバコもお客さんに臭うからなるべく控えろって言われるし!」

 その話をずっと聞いていた、ふんわりとした雰囲気の女性は結婚指輪をしていた。まるで子どもの話でも聞くかのように穏やかだった。ラーメンと餃子を食べている間、彼女が発したのは

「へえ」
「そう」
「なるほど」

 くらいだ。ああ、これが結婚をしている女性としていない女性の境目かと、名物と言われるちゃんぽんよりも夢中で2人の様子を見ていた。いや、聞いていたか。

 最後に香水の余韻にあたる「ラストノート」は、「家族との食生活から生まれるもの」。どんなにおしゃれママだって、子どもが喜ぶのならマックへ行く。本当なら独身時代のように、2000円ほどのグリルバーガーセットを選びたいけれどそこをあえて下げる。旦那さんが喜ぶなら、トンカツもジュワジュワと揚げる。いつの間にか一緒のものを食べる。そういう小さな積み重ねが既婚者というベールを作る。

 この3つの香りを合わせたものが、“生活臭”。臭いものではないと言ったけれど、もし臭かったとしても一緒に生活している家族は慣れている。悪臭とは判断しないで迎え入れてくれるだろう。独身女性がどんなに金を積んでも購入することのできない、ブレンド香水なのだ。簡単にまとえるものではない。

 ではその“生活臭”を持っていないのなら、私も含めて“本当にいい香り”を買って、男性を誘う。いい印象を撒き散らす。24時間丸ごと使える贅沢と、ストレスのない生活を楽しむのだ。どちらの香りを選ぶのかは、自分の価値観だけが知っている。

◇小林久乃(こばやし・ひさの)
エッセイスト、クリエイティブディレクター、ライター、編集など。エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事も持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、15万部を超えるベストセラーも多数。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。自らの体験をもとに既婚、未婚に関わらず女性が楽しく生きることを綴った、著書「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生(KKベストセラーズ刊)」が話題を集める。

(小林 久乃)