インタビュー

まずはやってみる、違ったらやめたらいい 天職を見つけた人の思考法

著者:Hint-Pot編集部

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当時を振り返り、微笑む嘉原さん【写真:Hint-Pot編集部】
当時を振り返り、微笑む嘉原さん【写真:Hint-Pot編集部】

夢の仕事に就職 4年半の現場経験

 大学院を秋に卒業してすぐ、嘉原さんのもとに一本の電話がかかってきた。それはBEPPU PROJECTが新しい事業を立ち上げるので、まずはアルバイトをしてみないか、という話だった。

 淡路島出身で、大学は関西地方。もちろん別府市には知り合いなどおらず、団体の方たちとも一週間しか会ったことがない。しかし、嘉原さんはふたつ返事でその話を受けることにした。まずは2か月間住み込みでのアルバイト。アーティストの住居兼アトリエの古いアパートに滞在しながらの生活は、嘉原さんにとっては充実感に満ちた生活だった。

 その後、代表のアシスタントとして就職することとなった嘉原さんだが、憧れを抱いていた職に就いてから、理想と現実のギャップなどはなかったのだろうか。

「思い描いていた仕事と違うということはありませんでしたね。でも、挫折はいっぱいしました。地域のみなさんとアーティストのはざまでコミュニケ―ションをとり、段取りするのが私たちの仕事。よくわからないものだと思われる地域の人に納得がいくまで説明したり、アーティストの意向が実現できず叱られたり。成功の方程式がある仕事ではないので、日々挑戦でした」

 就職から4年半。数年がかりで臨んだ大事業、国東半島芸術祭が終わり、改めてBEPPU PROJECTのようなNPO法人が、もっと社会に根付くための仕組み作りがなのではないかと考え始めた。そして、たまたま同時期に知ったのが、現在の職場である、アーツカウンシル東京の取り組みである東京アートポイント計画だった。

簡単そうで難しい でも大切にしたいこと

 同財団に転職後、戸惑ったのは、一見同じアートマネジメントの職種だといっても、立場や仕事内容はまるで違うことだった。

「アートプロジェクトを運営するNPO団体と行政の仲立ちをするのが、私たちの仕事。前は運営するNPO側だったわけですが、今ではより行政のロジックが理解できるようになったのは、転職してよかったことのひとつ。以前よりずっと俯瞰した視点と時間軸でとらえられるようになりましたね」

 転職から4年経ったいまでも、仕事は楽しくもあり大変でもあるという。しかし、アートの仕事を辞めようと思ったことはないと語る嘉原さんに、仕事のモチベーションを保ち続けるコツを聞いた。

「私の場合は、モチベーションをあまり意識したことがないのですが、寝食を忘れるくらい熱中できるものに、幸運にも出会えたことがいまに繋がっていると思います。これも大学の恩師が教えてくれたのですが、『まずはやってみる、違ったらやめたらいい』と。とにかく一回飛び込んでみて、違ったらまた違う道を探せばいいとおっしゃるんです。簡単そうで難しいのですが、常に心に刻んでいます」

「それと気を付けているのが、相手の話をしっかりと聞くこと。特に意見が対立したときは、思い込みでコミュニケーションをとらないようにしています。そんなときは『私も遠慮せずに話すのでそちらもお話してください』と伝えしてから、視点に相違がないか確認しあいます。意見をきちんと伝えないのは配慮とは違います。だから、相手にも気兼ねなく話してもらえるように注意しています」

自分の経験を他の人にも役立ててほしい 嘉原さんのこれからの夢

 ますます輝きを増し続ける嘉原さん。最後に今後の抱負を聞いた。

「私はこれからもずっとアートに携わる仕事をしていると思います。いまはまず、東京アートポイント計画の仕組みや思想をもっと伝えていきたいと考えています。そして、私が大学の恩師やいままで出会ってきたさまざまな方から学んだことを、お話する場があれば積極的に参加していきたいと考えています」

 現在、芸術大学、美術大学を卒業しても、なかなかアートプロジェクトの仕事に出会うことができない学生が増えているという。嘉原さんは、そんな学生たちのためにも自分の経験をいろいろな場所に話に行きたいと目を輝かせていた。

(Hint-Pot編集部)