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平手友梨奈の変化は止まらない “能力ゆえに葛藤を抱く”役柄から見える現在地とは?

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

“能力ゆえに葛藤を抱く”という解釈は平手自身とも重なる?

 そんな平手と似ていると思うのが、2019年に「バッド・ガイ」を大ヒットさせた米アーティストのビリー・アイリッシュだ。ビリーは平手と同じ2001年生まれ。アーティスト一家に生まれ、ハウススクール(学校ではなく家庭で義務教育を終える制度)で学び、現在は音楽プロデューサーである23歳の兄フィニアス・オコネルと共同で曲を作っている。

 フィニアスはアーティストの話を聞き、彼らになり切って作曲するタイプのプロデューサー。だからこそ、ビリーの表現力をより的確にとらえ、より良いパフォーマンスを引き出すことができるのだと思う。

 一方、歌手・ダンサーとしての平手のケースでは、誰がフィニアス的な役割を担ったのか? アーティスト・平手の育成環境は知る由もない。しかし、もしかすると現在の彼女を形作った表現力の多くは、平手が独自に掴み取ったものである可能性も高いだろう。もちろん憶測ではあるが。

 平手は今回演じた非浦英莉可について「呪いで人を殺め、黒い涙を流す以外はすべて共感できる(笑)」と語っている。英莉可は宗教団体に所属する父親の指示で“呪い屋”をしているが、自身が何をきっかけに呪うのかといえばやり場のない“怒り”なのだという。平手はその怒りが「能力を持ってしまったがために、普通になれないという葛藤や苦しみ」に端を発するものだと解釈している。

 当然、それを見込んでのキャスティングではあるだろうが、“能力ゆえに葛藤を抱く”という解釈は平手自身とも重なり、スクリーンを見守る私に複雑な切なさをもたらした。

引き込む演技とのど元まで押し届ける演技を使い分けていた平手

 初主演映画『響 -HIBIKI-』(2018)で、不思議な力と圧倒的な文才を持った女子高生を演じた平手は、ヒリヒリする要素を過剰にまとい、観客はスクリーンを正視するために必要以上の緊張感と体力を必要としたように思う。まるで持てる異能を制御できずにいるかのように。

 しかし本作では、むしろ観客にガス抜きをさせるかのように、引き込む演技とのど元まで押し届ける演技を使い分けていた。なぜそれが必要だと思ったのか? どのように緩急の使い方を覚えたのか? 森ガキ監督から「もうちょっと強い感情を」とか、「怒りを込めて」と直接的なアドバイスを受け、何度か繰り返し演技したのだというが。

 平手は岡田准一主演『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の公開も控えている。この作品では後ろに倒れる演技で、岡田への信頼感からかノールックで倒れ込んだと聞いている。誠に彼女らしいエピソードだろう。

 平手友梨奈が出演する映画には、作品を純粋に楽しむとともに、彼女(の変化)を観るという楽しみもある。

『さんかく窓の外側は夜』2021年1月22日(金)全国ロードショー (c)2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会(c)Tomoko Yamashita/libre

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。

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