インタビュー

先天性欠損症の子と歩む美馬アンナさんと先輩ママ 「普通って何?」を考える

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

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絵本出版プロジェクトが一時は暗礁に…「何とか出版したい!」

司会:すでに絵本は出版されたんですか。

浅原:それが、いろいろありまして……(苦笑)。2016年に絵本を作りたいと思った時、すぐに出版社が決まって、文章も絵も描いてくれる方もご紹介していただいたんです。購入見込みの方も1000人集まったんですが、出版社がキャッシュアウトしてしまい、止まってしまいました。2018年の秋くらいに出版社が「融資が決まったので動き出せます」となった時、絵本に精通された編集者が加わってくださいましたが、その方に「この絵本、出して何か意味があるんですか?」って言われたんです。

アンナ:えっ?

浅原:なぜかというと、当時の原稿は私たちの思いをまとめた架空の話だったんです。「この話はあなたたちが言いたいことを伝えるための作り話。結局は嘘の話ですよね。この話が読者の胸を打てば打つほど、作り話だと分かった時のショックは大きい。そういう絵本が売れても、何か意味があるんですか?」と言われました。「障害をテーマにした絵本は相当慎重に制作していく必要があり、絵本作りを甘く考えすぎています。批判的な意見も来るだろうし、それに耐え得るだけの準備も必要。この話は出版するべきじゃない」と。

 この時、「確かにそうだ」とハッとさせられた部分もありまして、私たちの言葉でしっかり伝えるべきだと1回仕切り直したんです。それが2019年の初め。そこから2年かけて、実際にあった話を元にいくつも話を考えて、この前の12月にやっと原稿とラフが完成しました。なので、今年は出版社を探そうという段階です。

アンナ:ああ、出版社が見つかってほしい!

浅原:今、みんなで出版社リストを作って探しています。もしお知り合いがいれば、ぜひご紹介ください!

司会:最終的には、どんなストーリーになっているのですか?

浅原:結局、うちの娘が実際に経験した話をベースに考えました。なので、右手が3本の指で生まれてきた女の子の話です。

アンナ:ここまで来たら、ぜひ出版したいですね。

浅原:そうなんです。先ほどの「普通って何だろう」というテーマも盛り込んでいるんですよ。やっぱり一般の5本指の人の普通と、指の数が違う人の普通をうまくすり合わせるが難しいことも分かるんです。私も娘を見て、「あれもできない、これもできない」と思いましたから。ですから、絵本を読んでもらった子どもたちに何か気付きがあればいいなと思っています。

アンナ:障害があるとかないとかに関わらず、人が生きていく上ですごく重要なことやそのヒントだったり、私たち大人が忘れてしまったりしたことを、子どもたちが教えてくれることってあると思うんですよね。きっと大人が読んでも気付きのある絵本になっていると思うので、一緒に読む親御さんたちも考えさせられたりするんでしょうね。

浅原:自信を持って出せる内容になっているので、何とか出版したいと思います。

 
<次回の後編ではアンナさんと浅原さんが「共感」について考えます>

◇浅原ゆき(あさはら・ゆき)
NPO法人「Hand&Foot」代表理事
2012年に右手の指が3本の娘「りっちゃん」を出産したことをきっかけにブログをスタート。全国にいる先天性四肢障害を持つ子どもの家族との交流をきっかけに、2013年に「Hand&Foot」を立ち上げた。2016年に絵本出版を目指してNPO法人化。現在では1000家族以上の会員とともに、どんな形の手足でもみんなが一緒に笑顔でいられる社会になるよう情報発信をするなど活動を続けている。
NPO法人「Hand&Foot」ウェブサイト:https://www.hand-and-foot.com

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)