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コロナ禍で風俗業界に入ったシングルマザー 尾野真千子が「命がけ」で挑んだ理由とは

著者:関口 裕子

もし今限界を感じているのであれば、ぜひ声をあげること

(c) 2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ
(c) 2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

 良子の身には、昨今世間を賑わせた事件のほとんどが起きたと言っても過言ではない。亡き夫の父親の介護問題、夫が認知した不倫相手との子どもの養育費、寡婦であることに付け込んだ男性からの誘い。

 そんなギリギリの生活でも、良子は人に、そして行政に頼ろうとしない。現実問題で言えば、性風俗業の従事者に持続化給付金は出ないのだが、良子は公団住宅に住んでいることすら申し訳なさそうにする。それはすべてを“自己責任”と捉えているからだ。

 抱え込まないでほしい。もし今限界を感じているのであれば、ぜひ声をあげること。この映画にはそんなメッセージも含まれる。人は1人で耐えられないという。その部分を担う役者、永瀬正敏が素晴らしい。

 良子の息子は中学生だが、これが手の離せない乳児だとしたら労働時間を捻出するのも難しい。仕事を選ぶことすら難しいコロナ禍では、心を病んでしまうシングルマザーも少なくないという。いや、シングルマザーでなくとも、つい自分の生きる意味や希望に思考が行きがちなコロナ禍では、多くの人が苦しい気持ちを抱えていると思う。

 そんな厳しい状況に生きる親子の話ではあるが、悲惨な状況のままでは終わらない。 “希望”が描かれ、前を向ける。物語の道程には笑いもある。人生はギリギリの状態でもふとした瞬間に笑い、小さなことを糧に浮上することがある。この映画は、そんな人生のような作品なのだ。

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