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仕事・人生

「この命を使うなら誰かのため」 手足3本を失った男性が美馬アンナさんに語る人生の意義

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

「山田千紘に会ってみたい」と言われるくらいの存在になりたい

「乙武洋匡さんのような存在になりたい」と語る山田さん【写真:荒川祐史】
「乙武洋匡さんのような存在になりたい」と語る山田さん【写真:荒川祐史】

司会:これまで自身の障害を積極的に発信する方は少なく、健常者も触れない傾向がありました。その両者を山田さんがつないでくださったように思います。

山田:僕自身、怪我をした当初は壁を作って閉ざしていましたが、それでは何も始まらない。自分で壁を作ったら、見てくれていた人も離れてしまいます。自分から扉を開ければ見える景色は違いますし、今まで以上に見てくれる人が増える。オープンにすればするほど、人は寄ってきてくれると思うんです。だから、子どもたちに「僕の真似をしろよ」というくらいオープンにしています。

アンナ:山田さんが実践していらっしゃることは、息子がもう少し大きくなって「何で僕には右手がないの?」と聞かれた時、私が言ってあげたいと思うことなんですよ。「あなたは普通に生活をしているだけで、いろいろな人に勇気やきっかけを与えることができるんだよ」。そう息子に伝えたいと思っています。だから、山田さんのメッセージは私と同じ境遇にいる親御さんにとってすごく刺激になっていますよ。

山田:うれしいですね。僕が怪我をした時、乙武洋匡さんという存在があって「両手両脚がない人がこれだけニコニコしているんだったら、片腕がある自分は負けてられないな」という方向で考えることができたんですね。同時に「この人に絶対会いたい」とも思いました。縁あってお会いできて、今では自宅にお伺いするくらい親しくさせていただいています。

僕にとって乙武さんの存在は大きかったので、これからの子どもたちにとって僕がそういう存在でありたいなと。片手がない、片脚がない子どもたちに「大丈夫、僕は3本ないから」と笑って言い返してあげたい。そういう形で目標になりたいというか、「山田千紘に会ってみたい」と言われるくらいの存在になりたいですね。

環境のせいにせず、自分で環境を変えればいい

司会:山田さんは就職の際に健常者と障害者が区別されるつらさを味わったそうですが、そういった区別がなくなるには何が必要だとお考えですか。

山田:今ある区別や差別がすべてなくなることはないと思います。やはり同じではないので、どうしても無理なことはある。「だったら区別のない新しい土俵を作ればいい」というのが僕の考えですね。今まであるルールや環境を変えることにこだわるのではなく、新しい土俵を作って、そちらにみんなが乗ってくるようにすればいい。時代を変えていけばいいと思います。長くある仕組みやルールは根が深いので、新しいものを作った方がいいですよ。

僕は最初の就職が障害者枠での採用で、一般採用の社員と同じ土俵に立たせてもらえませんでした。1年経って一般採用は昇給するのに、障害者枠は変わらない。なるほど、だったら自分が輝ける新しいフィールドを見つけよう、一般採用してくれる会社に入ろう。そう思って、今の職場に転職しました。環境のせいにしないで、自分で環境を変えればいいんです。

アンナ:力強い言葉ですね。

山田:ただ、それも1人ではできません。先日出版した本は「線路は続くよどこまでも」(廣済堂出版刊)というタイトルです。僕は人生を線路だと思っています。健常者の時にいろいろな駅を通り、いろいろな人に出会い、怪我をした後もみんなの力を借りながら、ここまで来ました。

周りの力を借りないと、1人では何もできません。これまで何度も何度も自分を見つめ直しているので、自分の身の丈や立ち位置は理解しています。成長するために必要なことは、自分の弱さを認めることだと思っています。一歩下がって客観的に自分を見つめ直すことで、より高く飛躍できる。だから、落ち込むことも大事だと思っています。今はこういう明るい感じでいますけど、ここまでの過程にはつらい時期や葛藤もあって、何度も落ち込みました。

僕は両脚が義足なので、転んだら誰かの手を借りないと立てません。「助けて」と言葉にしないと立てないんです。自分の弱さを認めた上で「ダメだ、助けてくれ」と言うことも大事。そうして助けを求めれば、みんな手を差し伸べてくれます。転んだ時も人生が苦しい時もその連続ですから、誰かに助けを求めることで成長できることもあるんじゃないかなと思います。

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