Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

銀杏はなぜ臭い? 栄養豊富でも食べ過ぎはNG! 栄養士がおいしい食べ方を伝授

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

秋の味覚、銀杏(写真はイメージ)【写真:写真AC】
秋の味覚、銀杏(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 イチョウの木から採れる銀杏(ギンナン)は今が収穫の時期です。秋を代表する食材ですが、道に落ちた銀杏をうっかり踏んでしまい、独特の臭いが漂った経験はありませんか? 古代から生育してイチョウは“生きた化石”とも言われます。その“実”と思われがちな銀杏について、栄養士の和漢歩実さんに話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

    目次

  1. 「生きた化石」と言われるイチョウの木の秘密
  2. 種皮3層のうち外側に臭い成分が…
  3. 糖質を主成分とし、脂質は少なめ 食べすぎはNG
  4. 電子レンジ調理が手軽 シンプルな味わいを
  5. 秋の味覚「銀杏」を楽しもう

「生きた化石」と言われるイチョウの木の秘密

秋の訪れを感じる黄金色に輝くイチョウ並木(写真はイメージ)【写真:写真AC】
秋の訪れを感じる黄金色に輝くイチョウ並木(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 イチョウは、恐竜がいたおよそ2億5000万年前の古生代の頃にはその“祖先”が地球上に誕生していたとされる古い植物です。氷河期も生き残るほど生命力が強く、“生きた化石”とも言われています。

 黄金色に輝くイチョウ並木の様子に本格的な秋の訪れを感じますよね。街路樹に使われることが多い理由は水分の多さ。火災時に延焼を防ぐ効果が期待されているそうです。

 イチョウにはオスとメスの木があり、銀杏はメスの木にだけなるそうです。同じイチョウ並木でもオスの木なら銀杏は落ちていません。

 イチョウは銀杏がなるまではオスとメスの区別がつかないそうです。つまり植樹の際に性別が分からないまま植えることになります。落ちている銀杏を歩行者がうっかり踏まないように、街路樹用にはオスと判明した木を接木した上で苗木を植えることもあるようです。

種皮3層のうち外側に臭い成分が…

木になっている時は、オレンジ色の種皮(外層)に包まれている銀杏(写真はイメージ)【写真:写真AC】
木になっている時は、オレンジ色の種皮(外層)に包まれている銀杏(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 銀杏はイチョウの実と言われていますが、すべて種子です。食べているヒスイ色の部分を胚乳(はいにゅう)と呼び、それを覆う「種皮」は薄い皮の「内層」と殻部分の「中層」、一番外側のオレンジ色をした肉質の「外層」の3つに分けられます。

 あの独特の臭いを発するのは外層。そこに「酪酸」や「ヘプタン酸」といった成分が混ざることで強烈な臭いになるそうです。

 なぜ、強烈な臭いを放つのかについては諸説あります。皮ごと食べる恐竜にフンで種子をあちこちに運んでもらうために恐竜が好きな臭いだったとか、外敵から種を守るためだったとか、定かではありません。

糖質を主成分とし、脂質は少なめ 食べすぎはNG

古くからスタミナ食として知られる銀杏(写真はイメージ)【写真:写真AC】
古くからスタミナ食として知られる銀杏(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 銀杏はエネルギー源となる糖質が主成分。ビタミンAとC、カリウムなどを多く含み、脂質が少量です。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、100グラム(生)あたりのエネルギー量は168キロカロリー、炭水化物は34.8グラム。1粒を約3グラムで換算すると、エネルギー量は約5キロカロリーとなります。

 古くから即効性のあるスタミナ食として知られ、薬膳では空咳や喘息、頻尿が気になる際に用いられます。ただし、一度にたくさんの量を食べすぎると、嘔吐や痙攣など中毒症状が出現することが。

 メチルピリドキシンという成分が関係しているのですが、熱に強いため、一般的な食中毒とは異なり、煮る、焼くなど加熱調理しても消失しません。個人差があるので一概には言えませんが、成人では10粒程度を目安にしておくと良いでしょう。

【参考】銀杏(生)のエネルギー・栄養素(日本食品標準成分表2020年版(八訂)文部科学省)

電子レンジ調理が手軽 シンプルな味わいを

秋の味覚を楽しむ炊き込みごはん(写真はイメージ)【写真:写真AC】
秋の味覚を楽しむ炊き込みごはん(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 手軽さで言えば、電子レンジ調理です。茶封筒や紙袋に10個程度の銀杏を入れて、口を2~3回折って500Wなら40秒ほど加熱します。破裂音が数回聞こえたらオッケーです。加熱時間が長すぎると庫内に飛び散る可能性があるので注意しましょう。取り出したら殻を取り除きます。

 加熱した銀杏は、茶碗蒸しや炊き込みごはんなどに入れるとおいしいですね。銀杏に含まれるビタミンAは脂溶性ビタミンなので、オリーブオイルをさっとかけたり、または油を引いたフライパンで軽く炒めたりすると吸収率がアップします。

 そのまま塩、コショウなど好みの味付けでいただくのも良いでしょう。シンプルながら旬を贅沢に味わえるおいしい食べ方です。

秋の味覚「銀杏」を楽しもう

 いかがでしたか。イチョウの木の秘密から銀杏の特徴や栄養素、おいしい食べ方などをご紹介しました。銀杏はイチョウの種子で、独特の臭いを放つのは、一番外側のオレンジ色をした種皮だったんですね。銀杏はエネルギー源となる糖質が主成分で、ビタミンCやカリウムなど栄養素も豊富。ただし、食べ過ぎてしまうと嘔吐や痙攣など中毒症状を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。食べる量には気をつけながら、今回ご紹介した手軽においしく味わうコツも参考に、秋の味覚を楽しんでくださいね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾