からだ・美容
“ギャラ飲み”女子という生き方 「普通の女の子になりたいのに…」
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ライターのRyoが、今を生きる女性たちの生き方に迫る連載「女子の生きざま図鑑」。一回目は、どこにも所属せず、男性の飲みの場に駆け付け金品をもらって一緒にお酒を飲む、通称「ギャラ飲み女子」のA子さん。なぜ彼女は「ギャラ飲み」で食べていこうと思ったのか……。彼女の日常に迫った。
◇ ◇ ◇
File1:ギャラ飲み女子
“ギャラ飲み”という言葉をご存じですか? 男性とともに数時間お酒を飲み、「タクシー代」という名目でお金を貰う飲みの場のことです。少し前までは、夜の世界で働く女性や港区で遊ぶ若年女性の中でのみ、使われていた言葉ですが、今や女子大生の間にも普及してきている気がします。
今日明日も確約されていない稼ぎ方で、それなりの生活を送る『ギャラ飲み女子』。そんな彼女たちの生態に迫りました!
【PROFILE】
R・Nさん(23)渋谷区在住
大学在学中にミスコンの先輩に連れられて初めてギャラ飲みの場へ。以降、接待飲食店のラウンジなどで転々とバイトしつつ大学を卒業。大学卒業後は『ギャラ飲み』だけで生活をするプロギャラ飲み女子。
【活動方法】
・ギャラ飲み主催者からの連絡
・ギャラ飲み専用の会員制アプリ
などでギャラ飲み案件を確認し、活動スタート。
【活動スケジュール】
PM07:00 ギャラ飲み依頼→確定
PM11:00 西麻布交差点で友人ふたりと合流
PM11:30 会員制バーの個室へ
『ギャラ飲み』スタート
AM01:00 タクシー代1万円を貰い解散
AM01:30 二件目の『ギャラ飲み』へ
AM04:00 タクシー代2万円を貰い解散
AM04:10 焼き肉を食べてタクシーで帰宅
合計収入:3万円
葛藤を抱えながら不安定な生活を続ける女性たち
【生きざま】
「私、社会不適合者なんです」
インパクトのある言葉を、かわいい顔で愛嬌たっぷりに口にするRさん。就職活動をして、お昼の仕事をしようと本気で考えていた時期もあったそう。でも、比べてしまうのは夜の仕事での時給。
「まる一日働いて残業までしても、ラウンジで働く6時間にはまったく敵わない。仕事内容は夜のほうが全然楽だし、そうやって考えていたら昼の仕事をする意味が分からなくなっちゃって」
ラウンジの平均時給は3000から5000円。業務内容は、お客さんの隣に座り、お酒を飲んで話し、たまにカラオケをする。ただそれだけ。ではなぜ、そのラウンジという仕事も辞めて『ギャラ飲み女子』になったのか。
「ラウンジって出勤する女の子が多いと、急に休みにされちゃうことがあるんです。月末だと地獄で……。いつクビになるかも分からない。そう考えると、自分がやりたいときに探して、手渡しで現金がもらえるギャラ飲みのほうが確実に思えたんですよね」
ギャラ飲みアプリなどの出現に伴い、その場は格段に増えた。求められる女の子も増え続けている……というわけではなく、女の子は飽和状態だという。
「本当は辞めたいんですけどね(笑)。この稼ぎ方をやりたくてやってる子って少ないと思います。叶えたい夢があるけど、まだそれだけではご飯が食べられない、昼とのWワーク、やりたいことが何もない、とか。大小理由はさまざまだけど……」
傍から見れば簡単に高収入を得られる仕事。しかし、紳士的な男性は多いが、ときにはビジネスとしてではなく、それ以上の関係を迫られたり、セクハラをされることもあるという。彼女たちにはそれぞれの葛藤があるようだ。
「時間も短いし、おいしいごはんやお酒が食べられて、業務も簡単。でも精神面がすり減っていく。少しずつ削られるみたいに減っていくんです。フッていきなりむなしくなって、涙が出てきたり。でもこの道を選んでるのは自分だから弱音なんか吐けないし、弱音吐くほど社会の人から見たら頑張ってないと思うし……」
毎日会社に勤務し、給料をもらって仕事する。その中で生まれる悩みや苦悩とは別の辛さが彼女たちには付きまとっていた。
最後に自分をひと言で表すと? と聞いてみた。
「ん~なんだろう(笑)。女の子、かな。普通の。いや、普通になりたい? 分かんないです。でも普通の道に進んでたら、こんな風にどうすればいいか分からなくなることもなかったのかな? とは思いますね。まあ、何が普通なのかなんてわかんないんですけど(笑)」
ハイブランドのバッグを持ち、ハイヒールを履いて、毎夜毎夜出かける彼女たち。就職したいと羨む一方で、楽な稼ぎ方を知ってしまったからこそ抜け出せない。抜け出せない自分の甘さを嫌悪し、どんどん自信をなくしていく。本当はそんなことないのに。自分を認めてあげてもいいはずなのに。今日も明日も分からない毎日をサバイブしている彼女たちは、本当は強いはずだ。女のドロドロとした世界の中で完璧に自分を演じる。すごいじゃないか。偉いじゃないか。そう思う。
暗くなりそうな話も明るく話そうとする、そして笑顔で自虐する。その健気さと私に対する気遣いには紛れもなく“普通の女の子”以上の強さが垣間見えた。
Rさんは、東京という眠らない街のどこかで今日も笑顔の仮面をかぶって生きている。
(Ryo)