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なぜ、紙のサイズにはAとBがあるの? 今さら聞けない違いと由来
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教えてくれた人:大泉 早苗
コピー機やプリンターなどでおなじみの紙のサイズといえばAやB。日常品でも、クリアファイルなどはA4、ノートやルーズリーフはB5とか。ふだん何気なく目にして使っていますが、なぜ紙のサイズにはA、Bなど2つあって、4や5などの数字があるのでしょうか? 印刷分野を中心にさまざまなサービスを展開するセザックス株式会社の“紙博士”大泉早苗さんに、聞きました。
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意外に知らない用紙のこと AやBはどう決められた?
用紙のAやB。そもそも、どう決められたのでしょうか? 大泉さんは、まず日本での紙の大まかな歴史を踏まえて次のように解説します。
「紙のサイズを表すAやBは、正確には紙加工仕上げ寸法で『A列判』と『B列判』と呼び、日本に規格ができたのは、昭和の初めと言われています。実は、それまで用紙の寸法は規格化されておらず、さまざまなサイズの用紙が存在していました。もともと日本には和紙の文化があり、江戸時代には美濃和紙が広く知られ、使われてきました。明治になるとそこに外国の洋紙が入ってきて、いろいろな寸法の紙が存在することになったようです」
1920年代の資料によると、日本では、書籍には『四六判』(788mm×1091mm)、新聞や雑誌などは『菊判』(636mm×939mm)と呼ばれる大きさが親しまれていたようです。しかし、ほかにもたくさんの種類の紙があり、寸法も微妙に異なっていたそう。これでは不都合が多く非経済的だという声も。諸外国で使われている紙の大きさなどを調べ、日本工業規格(JIS、前身JES)が寸法規格として1929年(昭和4年)にAとBの2つを定めたそうです。
Aはドイツ、Bは日本、なぜ2タイプがあるの?
しかし、なぜ、AとBの2つに? それぞれの違いはなんなのか、ギモンは深まります。
「簡単にいうと、Aはドイツ生まれ、Bは日本生まれです。まずそれぞれの違いから説明しましょう。Aは、19世紀にドイツの物理学者オズワルド氏によって提案されたもので、現在は国際標準化機構(ISO)が定める用紙サイズの国際規格です。昭和の初めに諸外国で使われている紙の大きさを調べた際に、A の規格が日本でなじみのある『菊判』の寸法に近い、ということでも採用したと言われています。縦横の長さの比が1:√2で(841mm×1189mm)で、面積が1平方メートルをA0判としています。そのA0判の半分がA1判、さらにその半分がA2判、その半分がA3判……といったようになります」
ちなみに、1:√2とは、「白銀比」と呼ばれ、「ルート長方形」と呼ばれる縦横比。順次その長辺を半分にしていっても縦横の比率は変わらず、裁断でロスが出ることなく効率良くさまざまな大きさの紙が作れるといいます。
一方で、日本生まれのBについて。実は、Aだけに統一すると『菊判』は対応できても、昔から広く好かれていた『四六判』には対応できず、『四六判』を廃止するとなったら混乱を招くおそれもあったようです。そこで、登場したのがB。
「Aの縦横比を維持したまま、面積を1.5倍にした寸法がBです。B0判は、縦横比率が1:√2(1030mm×1456mm)で面積が1.5平方メートルが基本。これで『四六判』に近いサイズを作れることが発見されます。Bは、日本独特のローカル規格の寸法なので、台湾や中国の一部を除いて、他の国にはこの寸法はめったにないです」
そのためBは英文などの外国向けの印刷物には不向きですので、注意したほうが良さそうです。昔は日本の公文書や書類などには日本独自のB判が使われていましたが、1990年代に国際規格のAに移行し、今はAが主流となっているようです。また日本のB 規格は、ISOが定めるBと異なるので気を付けましょう。
AもBも0~10まである
コピー機やプリンターなどで見かけるのはA3やA4、B4やB5ですが、実はこの数字も0~10まであるそうです。同じ数字ならBのほうがAより大きいです。ちなみに、A0の3回半分に折ったサイズがA3ということになります。
まずは、基本の0。用途としてA0判、B0判ともにポスターが多いそう。B0は、駅のホームの壁に貼ってある特大ポスター。続いて1~3まで見てみましょう。
A1…新聞の見開き1ページ
B1…映画館などで貼られているポスター
A2…見開きを閉じた新聞の大きさ
B2…大きめのカレンダー
A3…A4ノートを見開きコピーしたい時のサイズ
B3…電車の中吊り広告
数字が大きくなるにつれ、用紙の大きさはどんどん小さくなっていって、A10は、26mm×37mmで、付箋くらいの大きさに。
もちろん、AやB以外に規格から少しアレンジしたサイズの本や雑誌、カタログなども存在します。女性誌やファッション誌などに多いようです。また、アメリカなどではレターサイズなどの規格もあり、さまざま。寸法を測って確認してみるのも楽しいかもしれません。
(Hint-Pot編集部)