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夏の実録・帰省の墓参りで亡き母へ“謝罪” 良かれと思って選んだ「香典返し」の理由に周囲が仰天
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勤務先の関係者や母の知り合いなど 予想以上の参列者が
お母さんの葬儀は、滞りなく終わりました。ひとり娘の成美さんが巣立った後もずっと仕事をしていたお母さん。もともと社交的で面倒見が良く、田舎ならではの交流もあって付き合いも広く、たくさんの人が参列したといいます。
加えて東京の成美さんの勤務先からは、代表として上司が電車を乗り継ぎ何時間もかけて来てくれました。その際、会社の同僚や仕事関係者50人ほどから預かったという香典を持ってきました。
成美さんはひとり娘で独身のため、葬儀や母に関する手続き諸々を働きながらひとりですべて行うのは負担が大きく、葬儀社の薦めもあり、葬儀当日に香典返しを用意していました。参列者が予想より多く、葬儀社が用意した香典返しの在庫がなくなり追加注文になるということで、成美さんは自分の会社や仕事関連の方々への香典返しは、自分で選んで後日送ろうと決めました。
「母の知り合いもたくさん来てくださり、私の会社や仕事関係者の方々からもお悔やみをいただいて、親戚からもいいお葬式だったねと言われました。私自身、突然の喪主を務めるという緊張感があったのか当時は不思議なことに泣くとか、涙は出なかったんです。周囲からそう言ってもらえて良かったかなと。ちょっとは親孝行できたと思いました」
忌引きが終わり、出勤すると会社や仕事関係者からいろいろと声をかけてもらったといいます。悲しい気持ちはあったけど、温かいお葬式ができたということで自らを慰めていた成美さん。しかし、四十九日が過ぎ、仲の良い同僚社員たちとの飲み会の席で、はっと気づかされ、青ざめることが起きたのです。
“珍しい”香典返しが職場で話題になり「泣き笑い」状態に
お酒の量もほどほどに増えてきたころに「実家の片付けとか少しは落ち着いたの?」と、母亡き後の成美さんを励ます話から始まったといいます。
「同僚のひとりが『珍しい香典返しだったよね。実家のほうでは普通なのかな? その地域によってお葬式の風習とかも違うし』と聞かれました。ほかの同僚も『私も初めて見た香典返しだった』と言って。『いきなり喪主を務めて立派だったよね』とか、先輩からは『おっちょこちょいの成美ちゃんがよくやったよね』など、みんなが自分を認めてくれたような雰囲気になったんです」
そこで、少し気を良くした成美さんは、会社と仕事関係者に送った香典返しを選んだいきさつと理由について、次のように語ったといいます。
「いや、母が家に戻ってきたときに白のシーツがなくて困ったからさ、白のシーツは用意しておいたほうが良いなと思って。ぜひ使ってね」
みるみる同僚たちの顔が驚きで引きつっていったといいます。
ひとりが「え? そういう意味だったの? 私、もうシーツを使って寝ちゃったんだけど、ええっ??」「ちょ、ちょっと、縁起悪…」
そこで成美さんは、はっとしたといいます。
「縁起悪って言葉で、ああ、そうかと。母は亡くなったんだと、じわじわ実感として沸いてきました。葬儀のときは冷静な判断ができず、母の死を受け入れることができずにいたようです。ただただ、母を寝かせる白いシーツの用意がなかったということだけが頭にあって、勢いでネットで選んでしまったんですが、亡くなった人を寝かせるシーツだったと」
そこでようやく、ぽろぽろと涙が流れてきたという成美さん。母の最期にミソをつけてしまったようで申し訳ない気分でいっぱいになったそうです。居合わせた同僚から慰められ、励まされ、もらい泣きする同期もいて、「泣き笑い」状態になったとか。
幸い、母の関係者や近所の人たちには葬儀社が用意した「紅茶とクッキー」の香典返しを渡していました。とり急ぎ自分で連絡できる範囲の仕事関係者には「そぐわない香典返しをしてしまった」ということで謝罪をしたそうです。しかし『お客様用にちょうどほしかったのよ』とか『赤ちゃん用に早速使わせてもらってるよ』といった優しい言葉が返って少し複雑な思いに。「なぜそれを選んだか」の理由は言えなかったといいます。
今年もお盆に帰省してお墓参りをして、そのときの「失敗」を謝るという成美さん。「まあ、私は子どもの頃からおっちょこちょいですから、母も笑って許してくれているでしょう」
(Hint-Pot編集部)