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SNSで空き巣 他人の長期留守をネット投稿すると罪に? お盆休み前に知っておきたい法的責任
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教えてくれた人:西尾 公伸
過失と因果関係が認められるかがカギ
弁護士の西尾公伸氏によると、結論から言って、このようなケースでは「支払い義務はない」と考えられるのだそうです。万が一裁判になったとしても、「損害賠償請求が認容され、Aさんの支払い義務が認められる可能性は極めて低い」といいます。
理由は主に以下の2点。
1、Aさんの過失が認められるとは言い難いこと
2、Aさんの行為と本件損害の相当因果関係が認められるとは言い難いこと
が挙げられます。
1、過失の有無について
AさんのSNSでの投稿に対し、Bさん宅に空き巣が入ると予見できたかが、今回のポイントです。
西尾氏によると、「我が家のお向かいさんは今日から1週間海外旅行」という情報をSNSに書き込みをすれば、Aさんのアカウントが鍵付きのアカウントでない限り、誰でも当該情報にアクセスすること自体は可能です。
しかし、書き込みに対する閲覧者が日頃から非常に多い著名人であるなど、特別な事情を除けば、Aさんのような投稿をしても、実際に誰かがこの書き込みを見て、Bさん宅を特定し、空き巣犯人がBさん宅に侵入、被害が生じるということまで予見可能であるとは言えないといいます。よって、過失(結果回避義務違反)が認められるとは言い難いのだそうです。
2、Aさんの行為と損害との相当因果関係があるか
また、西尾氏は、本件でAさんの投稿について、この事実関係では、「Aさんの行為があったから空き巣に入られたとまで言うことはできない」といいます。
というのも、Aさんの書き込みがなかったとしても、Bさん宅に空き巣が入られた可能性というのは十分あり得るからです。よって、Aさんが投稿した事実のみでは、因果関係が認められるとは言い難いのだそうです。
今回のケースでは、Aさんに賠償責任は問われないようです。では、もし友人や知人から留守を任された場合、どのようなことに気を付けたほうがいいのでしょうか。
安易な約束にはご用心 思わぬトラブルに発展することも…
西尾氏によると「口約束であっても、安易に引き受けないほうが良い場合がある」といいます。それは、契約方式は自由のため、口頭でも当事者間で何らかの合意に至った場合には、各当事者が法的な義務を負う場合があるからです。
単に「留守をお願い」と言われ、言われた側がそれに応じた場合、法的な義務は発生しないのが通常ですが、特別に、当事者間の従前の関係性や経緯、対価の有無等から、その口約束が法的にみて何らかの合意に至っているような場合には、各当事者に法的な義務が発生する場合も考えられるので、注意が必要です。
また、「留守をお願い」という言葉は、さまざまな意味に解釈できる余地があるため、各当事者間で、「お願いしている内容」や「お願いされている内容」についての認識が異なっている場合もあると考えられます。
そのため、単に「留守をお願い」と言われ、それに応じたような場合には、法的な義務があるか否かにかかわらずその解釈をめぐって、後日、トラブルが発生する可能性は否定できません。
無用なトラブルを避けるには、「留守をお願い」と言われた場合、それを言われた側が気軽な挨拶程度の認識でいたとしても、念のため具体的に何をお願いされているのか確認したほうがいいようです。
弁護士法人法律事務所オーセンス
弁護士 西尾公伸(第二東京弁護士会 所属)
(Hint-Pot編集部)