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仕事・人生

ヘッドハンティングされる人はどこが違う? 外資系企業で働く女性に学ぶ転職力

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・白石 あゆみ

当時を思い出して、懐かしむ中田さん【写真:Hint-Pot編集部】
当時を思い出して、懐かしむ中田さん【写真:Hint-Pot編集部】

安全・安心なオーガニック製品を日本全国に届けたい、という想い

 仕事が安定してきた30歳のころ、知り合いから新しく設立する会社への誘いがくる。

「私は自分から転職しようと思って動いたことは一度しかなくて、基本的にお誘いいただくことが多いんです。自分の思っていることを伝えられるコミュニケーション能力と、未開の地を開拓していくガッツを見て評価してくれる人が近くにいたのは幸運でした。とにかく普段から仕事を頑張るということしか、していなかったかもしれませんね」

 中田さんはアメリカに渡った後3社を経験し、コンセプトに深く共感する今の会社に出会った。そして、今までの半導体やIPの営業から、オーガニックコスメの販路を見つけるという、まったく新しい仕事を始めることに。

「アメリカで買うと安いのに、日本で買うと異様に高いものってありますよね。逆も然り。海外のいいものを、海外と同じ価格で買えるようにしたいと聞いたとき、すごく面白いなと思いました。それに私たちが開業したころ、日本に本物のオーガニックのものがほとんどなかったので、日本に住む多くの人が安心して使えるものをお手頃な価格で届けたいと思いました。最終的には、やっちゃおうかなってすごく軽い感じで決めたんですけどね(笑)」

 コスメ業界は全くの初めてだった彼女は、アメリカで働き始めたころと同じように、一件一件、電話をかけ始めるところから始めた。そして、大学時代に学んだ化学の知識を生かし、化粧品製造業許可の認可を取得する。

素直に シンプルに 夢を追いかけ続ける

「とにかく“シンプル”にが、私の信条です。難しいな、と思うことも意外と自分がこんがらがらせていたりするもの。例えば、新しい場所で誰も知らないなら片っ端から電話してみればいい。日本にオーガニックの基準がないなら、アメリカでUSDA(アメリカのオーガニック製品認定)を取って、安心安全を示せばいい、といったように」

 こうして中田さんの努力もあり、主力コスメ商品「product(プロダクト)」は広く知られるところとなった。彼女の今後の夢は、日本にオーガニック製品のすばらしさをもっと広め、市場を拡大していくこと。日本の場合、オーガニックといえば、高価で手に入りにくく、デイリーに使うにはハードルが高いというイメージがある。さらにオーガニックという言葉だけがひとり歩きしがちで、ユーザーは何を選んでいいかわからない。そんな概念を根本から覆していきたい、と語る。

日本のオーガニック市場は、食品などを含めてここ数年で増加傾向にあるとはいえ、全コスメ製品の中で占めるオーガニック製品の割合はたった数%。アメリカのように、オーガニックの専門店でなくても、当たり前に手に入る環境を作り、安心して暮らせる社会を作っていきたいという。

「これまでたくさんミスをして、涙を流したり悔しくてしかたなかったりしたことはありますが、失敗したって思いはないんですよ。ミスでくよくよするより、そのあとのリカバリーが大切。それと私の場合、これまで大成功したと思っていることもないんです。これから先にもっと大きな成功があると信じているので」

 中田幸子さんが輝き続ける原動力――それは、いつまでも自分に素直に、シンプルに考えること。そして、夢を真摯に追いかけ続けることだった。

(Hint-Pot編集部・白石 あゆみ)