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「大丈夫です」と言われその場を離れたら… 自転車の“ながら運転”で接触事故 警察を呼ばなかった場合のリスクを弁護士が解説
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教えてくれた人:坂本 尚志

新年度は、自転車での通学や通勤を始める人が増える季節です。しかし、スマートフォンを見ながらの運転やイヤホンを装着したままの走行は、思わぬ重大事故につながる危険をはらんでいます。とくに2026年4月からは、自転車の交通違反に対しても「青切符(反則金制度)」が導入され、取り締まりの強化が進んでいます。自転車の“ながら運転”や事故後の対応について、弁護士の坂本尚志先生に話を聞きました。
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一瞬の脇見が招いた接触事故
この春、大学に入学しました。実家から通える距離だったので、毎日の通学には自転車を利用しています。駅までバスで行くよりも早く、周囲にも同じように自転車で通学している学生を多く見かけます。
私は通学中、スマホで音楽を聴くことが習慣になっており、いつもイヤホンをつけたまま自転車に乗っていました。ある日の朝のことです。その日は授業に遅れそうで、少し急いでいました。
走行中、ポケットの中のスマホにメッセージの通知が届きました。友人からの「今日の講義って教室変わった?」という内容です。気になってしまい、つい片手でスマホを確認しながら自転車を漕いでしまいました。
その瞬間でした。歩道を歩いていた人と、私の自転車が軽く接触してしまったのです。
慌てて自転車を止めると、相手の方は「大丈夫です」と言い、そのまま歩いて行きました。私も何度か謝罪し、その場を離れました。しかし、帰り道になってから急に不安が襲ってきました。
イヤホンで音楽を聴き、スマホを見ながら走っていたのは事実です。もし相手の方があとからけがに気づいて届け出た場合、私は重い責任を問われるのでしょうか。また、警察を呼ばずにその場を離れてしまったことは、法的に大きな問題になるのでしょうか。
自転車でも事故後は「警察への報告義務」
こうした自転車事故の対応について、弁護士の坂本尚志先生は次のように警鐘を鳴らします。
「自転車は法律上『軽車両』に分類され、道路交通法の対象となります。交通事故を起こした場合、自転車であっても負傷者の救護や警察への報告を行う義務があります。相手がその場で『大丈夫』と言ったとしても、事故が起きた以上はただちに警察へ連絡するのが原則です。警察への報告を怠り、そのまま立ち去ってしまった場合、状況によっては『事故報告義務違反』や、いわゆる“ひき逃げ”と同様の責任を問われる可能性があります」
また、事故の要因となった“ながら運転”への風当たりは、今後さらに強まると坂本弁護士は指摘します。
「2024年の法改正により、自転車の危険運転への罰則は強化されました。さらに2026年4月からは、自転車の交通違反にも反則金制度(青切符)が導入されます。スマホの操作や、周囲の音が聞こえない状態でのイヤホン使用は、とくに対象となりやすい違反です。これまでは指導や注意で済んでいたケースでも、今後は反則金の対象になる可能性が高いでしょう」
さらに、法的な罰則だけでなく、民事上の高額な賠償リスクも忘れてはなりません。
「万が一、自転車事故で相手にけがをさせた場合、その程度や内容、過失の割合によっては数百万円から数千万円単位の損害賠償責任が生じることもあります。スマホの操作などは著しい過失とみなされ、賠償額が増額される要因にもなり得ます。自転車は手軽な乗り物ですが、一歩間違えれば凶器になるという自覚を持ち、新生活を機に交通ルールを再確認することが、自分と他人の身を守る重要な方法です」
※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。
(Hint-Pot編集部)