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仕事・人生

白血病を乗り越えてー24歳で「食品ロス」会社役員になった女性の原動力

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・白石 あゆみ

父を思い管理栄養士を目指すも挫折 しかし失敗が「転機」に

 小学4年生で寛解し、普通の生活に戻ることができた篠田さんは、高校2年生の進路選択時に改めて「食」について考えるようになったそうだ。

「父が糖尿病だったので、食べ物に対して改めて興味を持ちました。自身の闘病経験から、食べ物が身体に与える影響について身をもって知っていたこともあり、管理栄養士になって身近な人に役立つ仕事がしたいと考えるようになったんです」

 大学受験では、管理栄養士の資格が取れる公立大学を志望していた。しかし、センター試験の数学で大きな失敗をしてしまい、篠田さんは女子大の英文科に進学することになったという。

「金銭的負担も考えると浪人をする選択肢はなかったため、他教科を利用してセンター利用で進学することに決めました。将来、「食」に関する仕事をしたいという気持ちは変わらなかったので、大学では進路選択の幅を広げるため英語を学ぼうと思いました。元の志望校の場合は上京する予定ではなかったので、いま思えばこの選択は正解だったと思います」

 こうして大学進学をきっかけに上京した篠田さんは、宿の管理をする代わりに家賃がゼロでいいという、ゲストハウスに住み込みで働いたり、カフェでアルバイトをするなど、将来の夢を模索しながら、さまざまなアルバイトを経験する。

「ゲストハウスのお客さんには世界中を旅行している人も多く、とても刺激を受けました。就活の相談をしたこともありますね。たくさんの人からアドバイスをもらって、やはり将来は「食」に関する仕事がしたいという思いは確固たるものになりました」。

「食」に関わる企業に50社以上エントリー たくさんの人と出会い模索した就活時代

 篠田さんは、大学3年生になり就職活動を見越して始めたことがあるという。

 それは、マッチングサービスを利用しての、OBOG訪問だった。出会った社会人は50人超。その活動のなかで、のちに新卒で就職することになる口コミグルメサービスを運営する会社の社員に勧められ、インターンとして入社することとなった。大学3年生の夏だった。

「もともと、数をこなすことが好きで、たくさん見比べないと納得ができない性分でした。少ない選択肢のなかで可能性を狭めてしまうのはもったいないと思ってしまいますね。なるべくたくさん経験をしてから選択するという過程は、今でも変わっていません。それというのも、自分は天才じゃないというのは早い段階から気が付いていたので、天才に勝つには視野の広さや、視点を変えられる柔軟さを身に着けるしかないと思ったんです」

 この姿勢は、就職活動本番でも役立ったという。篠田さんがエントリーした会社は、なんと50社以上。食品メーカーや卸売業、コンサルタントやIT企業など、「食」に関わる企業であれば、とにかくジャンルを問わなかったそうだ。

 結果的に内々定がもらえたのは2社。大手コンサルタント会社と、インターンとして働いていた口コミグルメサービスだった。最終的な決め手は、就職活動を通して将来起業をしたいと思い始めたからだという。そして、自分が事業をやり始めるのであれば、現場での経験を積むほうがいいと考えたそうだ。

 長い就職活動を通して篠田さんが気を付けたことは、自分が興味がないと思った会社でもエントリーしてみることだという。

「自分に向いていないと思っていても、実際にやってみたら思い込みだったりします。私の場合は、興味があった『食』という大枠で囲って、端から端まで受けていきました。そうすると、不思議と自分のなかのブレが見えてきましたね。就職したら一日の大半を仕事に費やすことになるんですから、ミスマッチだったら辛いじゃないですか。この手間は惜しんではいけないと思います」。

 篠田さんは幼いころの闘病をきっかけに、職業としての「食」に興味を持つも、実際に就活を始めるまでは、進路が定まらなかったという。そんな等身大な就職活動体験を語る篠田さんに次回は、就職後に自ら行った食に関する取り組みとフードロス事業「TABETE」に携わることとなったきっかけを聞く。

(Hint-Pot編集部・白石 あゆみ)