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認知症の父から異臭…入浴拒否が始まった アラフィフ娘が感じた介護との向き合い方

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

自身の中に溜め込まない 介護が少し“ラク”になるコツ

「いや~、ウチの父親、ボケちゃって大変でさ~!」

 父が認知症を患ったときから、私はこのように、明るく周囲に話すようにしています。すると面白いもので「これまで誰にも言えなかったんだけど、実は、ウチの母も……」とか「祖母が認知症になって大変で……」などと、家族の悩みを打ち明けてくる人が増えたのです。

認知症の家族がいることは、恥ずかしいことなのでしょうか?

 なぜか日本では、根強い偏見がはびこり、身内の恥だからと家族の認知症を隠しがち。しかし、そうして隠すことで周囲の家族がストレスをためてしまい、鬱になるなど精神的に病んでしまうことが多いと聞きます。実際にうちの母も、最初は鬱状態になっていました。また、認知症の人に引きずられるように配偶者もまた認知症を患ってしまう……ということが少なくないようです。

 実際のところ、認知症になる、認知症の家族がいることは、恥ずかしいことなのでしょうか?

 認知症を患うには、もちろんさまざまな理由があります。しかし、明確な予防法や対処法などもないことから、食生活や運動不足などそうした断片的な知識が先行してしまうこともあります。

「認知症にかかるヤツは、怠惰で、テキトーな食生活をしてきた、ダメなヤツだ」

 そんな「意地悪」な認識をされてしまうことも、少なくはないでしょう。

 しかし、厚生労働省によれば、認知症患者数は国民の長寿化とともに右肩上がりに増加しています。2012年時点で全国に約462万人、今から6年後の2025年には、患者数が700万人を越えるだろうと予想されています。

 700万人ということは、65歳以上の高齢者の5人にひとりは、認知症になるということ。これはもう、恥ずかしいだの、怠惰だったからだの、なんて言っている場合ではありません。

5人に1人が認知症に 「父は新しい個性を放つようになった」母と共有した方向性

 5人に1人という高確率で発症するということは、端的に言えば、高齢になれば誰でもなる可能性があるということ。食事や生活習慣くらいで防げるものであれば、そんな人数になるわけないのですから!

「我が家の父は、新しい個性を放つようになった」現在、我が家では、そう認識するよう努力をしています。とはいえ、そう簡単に認識は変えられないものなので、ゆっくりと……。この方向性を母に告げたとき、母は、「そう、これまでのお父さんじゃなくなったっていうことね」と、ケラケラと笑ってくれました。

 笑顔。

 これは、認知症患者と向き合う際に、最も必要な要素だと、父と向き合ってきて感じています。

 認知症を「個性」として認識することで、私たち介護側に立つ者の気持ちが少しは軽くなるかもしれません。来るべき認知症700万人時代に備えて、私たちの認識を少しずつ変えていかなければならない、そう思う今日このごろです。