Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

「ここで産みたくない」 打ち明けた“居心地の悪さ” 美馬アンナさんが明かす産院変更

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

先天性形成不全のため右手首から先がないミニっちと美馬アンナさん(2022年撮影)【写真:荒川祐史】
先天性形成不全のため右手首から先がないミニっちと美馬アンナさん(2022年撮影)【写真:荒川祐史】

 俳優・美馬アンナさんには、生まれつき右手首から先がない4歳の男の子がいます。プロ野球選手の夫・美馬学投手の愛称“美馬っち”にちなみ、ミニっちと呼ばれる愛息は明るくユーモアいっぱいに成長。右手がなくても何でも上手にできるようになりました。大きな愛情をもって息子を育てる夫妻は、環境と心の準備が整ったと第2子を迎えることを決意。2023年8月、元気いっぱいの長女・ひめっちが誕生しました。中編では、妊娠期に経験した胎児ドックや産院変更、出産について伺います。

 ◇ ◇ ◇

胎児ドックで安心得るも、産院での“流れ作業”検診に「ここで産みたくない」

 第2子をお腹に宿したアンナさんはまず、ミニっちを出産した産婦人科医院で妊婦健診に臨みました。そこで紹介されたのが胎児ドック。一般的なエコー検査に比べ、高精度の超音波機器を使って胎児に形態異常や染色体異常の可能性がないかを調べる検査です。

 ミニっちの妊娠時にも一般的なエコー検査に不安を感じたアンナさんは、友人の勧めもあり、一般的な検査開始時期から大幅に遅れながらも妊娠7か月目に胎児ドックを受診。ただ、この頃には赤ちゃんも大きく育っているため体の陰に隠れる部分も多く、エコーでは確認できないこともあるそう。そこで、今回は胎児ドック受診可能な妊娠初期から受けることにしました。

「胎児ドック専門の先生をご紹介いただき、妊娠初期・中期・後期と3回受けました。とても丁寧に診察してくださる先生で、隠れて見えない場所があれば赤ちゃんが体勢を変えるまで待ち続けたり、お腹に刺激を与えて動くように促したりしながら、一つひとつ細かく検査をして下さいました。足の指先から頭のてっぺんまで、骨1本1本、内臓一つひとつ、血液の流れまで確認する緻密さで、医療技術の高さにビックリしました」

 美馬夫妻が胎児ドックに求めたのは、準備を整えて第2子を迎えるための安心感。もし障がいがあるなら、出産までにその準備を整えておきたかったのです。不安になりがちな妊娠期間中でも、お腹の子の状態が手に取るようにわかる胎児ドックは楽しみの一つになったといいます。

 その一方、産院をめぐっては晴れない思いも経験しました。ミニっちを出産した産院と担当医に絶対的な信頼を置くものの、施設の老朽化などもあり、分娩は提携する大規模病院で行われることに。前置胎盤のため帝王切開での出産が決まった後、初めて提携病院で妊婦健診を受けたアンナさんは居心地の悪さを覚えました。

「診察が完全に流れ作業だったんです。エコー画像で頭のサイズを測って『問題ないですね。心臓も動いています。はい、じゃあ1か月後』で終わり。こちらが質問する隙もない。わずか5分で終了です。妊婦は誰でも不安な気持ちを抱えていると思うんです。だからこそ、お腹の中にいる我が子の様子を知ることができる検診という時間は、妊婦にとって大切なもの。なんだかモヤモヤした気持ちが残ってしまいました」

 ミニっちの担当医に正直な気持ちを打ち明けると「信頼関係とストレスなく出産に臨めることが大切」と理解してくれ、産院を変更することに。幸運にも、アンナさんの姉や親戚も出産経験のある産院が受け入れてくれることになりました。新しい産院で受けた妊婦健診は不安に寄り添う丁寧なもので、心穏やかに出産当日を迎えることができました。

第2子出産直後に繰り返した「大丈夫ですか? 問題ありませんか?」

生まれてきた第2子を抱きしめる美馬アンナさん【写真提供:美馬アンナ】
生まれてきた第2子を抱きしめる美馬アンナさん【写真提供:美馬アンナ】

 妊娠期間中には、ミニっちの成長を感じる出来事もありました。出産を間近に控えた昨夏、家族3人最後の思い出作りとしてホテルに宿泊したときのこと。アンナさんが浴室で湯船に浸かってくつろいでいると、ミニっちが何度も様子を見に来たそうです。

「湯船の横に椅子を置いて、私のことをジーッと見ている。何をしているのか聞いたら『ママ、大丈夫かなって思って』と心配して見守ってくれていたんです。夫が見てくるように言ったのかと思ったら『俺、何も言ってないよ』って。息子の優しさに夫婦でウルッとしてしまいました(笑)」

 迎えた出産当日。「何があっても大丈夫」と気丈に帝王切開に臨んだアンナさんですが、術後に生まれたばかりの我が子に初対面したときには、周囲を質問攻めにしてしまったといいます。

「『大丈夫ですか? 問題ありませんか?』の連発でした。胎児ドックは受けていたけれど、それでも検査が100パーセント正確ではないこと、生まれてからわかる障がいもあることは自分が一番よくわかっていたので。先生を質問攻めしている自分に気がついたとき、『あ、私やっぱり心配だったんだ』って実感しました」

 出産には夫とミニっち、家族のほかにもミニっち出産時の担当医も産院に駆けつけてくれました。産院でのアフターケアも手厚く、助産師たちが「赤ちゃんのためにもしっかり睡眠を取ることが大切。寝られないんだったら、ずっと預けていていいわよ」と全面サポート。母子ともに温かな愛情に包まれた出産を経験することができました。

 さて、待望の妹を授かった新米お兄さんのミニっち。アンナさんとひめっちが退院し、自宅に戻ってきたとき、あふれる愛を止められなかったようです。

「『産まれたばかりだから、まだチューはしないでね』って言ったんですけど、誰よりも先にチューをしてしまい、みんなで『あっ!』っと……。虫歯がなくてよかったです(苦笑)」

 新メンバー・ひめっちを加えた美馬家の新たな生活がスタートしました。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)