カルチャー
「楽しむことも、浸ることもできない」外国人観光客が見た渋谷ハロウィーン ハチ公像封鎖は「残念」
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ハロウィーンを迎えた10月31日、東京・渋谷は厳戒ムードに包まれました。何より目を引いたのは、おびただしい数の警察官と警察車両、そして人出の多さです。何も知らずに渋谷を訪れた外国人観光客は、年に一度の“渋ハロ”をどう受け止めたのでしょうか。現地で取材しました。
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「かなり圧倒されていると言わざるを得ません」
「普段は家でハロウィーンを祝わないのですが、どうやらこの辺りではハロウィーンが盛大なイベントらしいので、ここに来ることにしました。だから見に来たんです。今のところ、かなり圧倒されていると言わざるを得ません。今日は警察官がたくさん来ていますね。警察官に毎日来るのか、それとも特別なことなのか聞いたんですが、どうやら特別なことらしいです。ええ、クレイジーですね」
渋谷に人が増え始めた午後5時過ぎ、こう話したのはオーストリアから来たローランドさんです。騒然とするハチ公口周辺の雰囲気に、何度もカメラを向けていました。
この日、渋谷駅のハチ公口は封鎖され、山手線から下車した乗客は宮益坂方面へと誘導されました。条例により路上飲酒は禁止され、駅前の至るところに「渋谷はハロウィーンをお休みします」の看板が掲げられ、スクランブル交差点一帯は警察官の絶え間ない指示で立ち止まることすら許されません。
「彼らはとても厳しい。常に押しのけてくる。どこにも立っていてはいけない。だから私は実際にこの隅に立っている。じっと立っていられる数少ない場所の一つなんだ」
滞留は許されず、やじ馬になるにも、少し離れた場所から見つめるしかありませんでした。
「10秒間は見ることができるけど、その後はずっと楽しむことも、きちんと浸ることもできない。ずっと歩き続けなければならないような感じ。だからまるでベルトコンベヤーに乗っているような気持ちになります」
センター街は動線が分けられ、臨時休業する店舗も。パトロールは強化され、警察官が常に目を光らせていました。名所の忠犬ハチ公像周辺も白い囲いで覆われ、中をのぞくことはできません。アジア系の観光客グループは隙間からセルフィーを伸ばして必死に撮影。日本人ガイドに先導された大勢の外国人ツアー集団はなすすべもなく横を通過していきました。
ベラルーシから来た男性は、「渋谷ハロウィーンのためにやって来ました。ハチ公像を見たかったけど、私が到着する前にフェンスで閉じられていました」と残念がり、「とてもたくさんの人がいるけど、しかし、非常に組織化されています。友達と待ち合わせているけど、見つけやすくするため移動する必要があります」と混雑ぶりに驚いていました。
「混乱と暴力よりはこっちのほうがいい」
国内ではイベントの自粛が広く周知されていましたが、街頭には規制を知らずにやってきた外国人観光客があふれていました。彼らにとって、“カオス”になった渋谷は、逆に好奇の対象として映っていました。警察官に向かい、「写真を撮っていいか」と尋ねる外国人。仮装姿の日本人女性に突然カメラを向け、「やめて! 今すぐ画像を消して」と注意される外国人男性もいました。一方で、ディスカウントストアでコスプレグッズを買い、裏路地で着替える外国人女性たちの姿も……。異様なムードに刺激され、それぞれのハロウィーンの夜はふけていきました。
SNS上には、現場の実況中継とともに、「渋谷とんでもないことになってて草」「渋谷ハロウィンNOとか嘘だった……」「渋谷アホみたいに混んでてやばい」などのコメントも多数。ただ、大きなトラブルなく終えたのは、厳重な警備体制の成果と言えそうです。
前出のローランドさんは、「みんなが来るから必要なんだろうね。過去に混乱と暴力があったって言うならね。混乱と暴力よりはこっちのほうがいい」と理解。今後も一見さんの外国人観光客にどのように情報を伝えていくのかは課題の一つになりそうです。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)