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好みが分かれる“エビは殻ごと食べるか”問題 むく派にも知ってほしい、おいしい焼き方とは
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教えてくれた人:和漢 歩実

海鮮バーベキューでも人気の、殻付きで焼いたエビの塩焼き。殻ごと食べるべきか、または殻をむいて残して良いのか、迷うことがあるかもしれません。実際、どう食べれば良いのでしょうか。エビをおいしく焼くコツも含めて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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エビの殻には、身にはない栄養成分が含まれている
焼いたエビの殻を食べるかどうかについては、好みが分かれるところです。むいて残してもかまいませんが、栄養面では、殻ごと食べるほうが良いといえます。
そもそもエビは、高たんぱく質で低脂肪な食品です。そのほか、体内の酸化を防ぐ作用で“若返りのビタミン”と呼ばれるビタミンE、血液サラサラ効果で知られるEPA(エイコサペンタエン酸)や、脳の活性化に役立つDHA(ドコサヘキサエン酸)のオメガ3系不飽和脂肪酸も、微量ですが含まれています。肝機能や疲労の回復を促す効果があるタウリンなどもあり、健康に良いさまざまな成分があることが特徴です。
エビの殻には、身には存在しない食物繊維の一種、キチンが含まれています。腸内の有害物質を吸着して便と一緒に体外へ出したり、善玉菌のエサになって腸内を整えたりすることが期待されています。加熱すると赤くなるのは、天然色素の一種、アスタキサンチンです。強い抗酸化作用を持ち、生活習慣病や老化防止に役立つと考えられています。
これらの成分は水に溶け出しにくい性質を持つため、殻を食べること以外で摂取するのは難しいです。しかし、殻はよく噛まないと食べにくく、消化も悪いので、苦手な人も多いでしょう。口の中に刺さったり、傷つけたりすることもあるので、食べる際は注意しましょう。
下処理で背ワタは取るけれど、腹ワタはどうする?
エビの殻は、食べる・食べないにかかわらず、ついたまま焼いたほうがおいしく仕上がります。殻ごと焼くことで、エビの旨味が凝縮され、香ばしさもプラス。身の縮みも少なくなります。殻を食べるのが苦手でも、下処理の段階ではむかないほうが良いでしょう。
ただし、「背ワタ」は下処理で取り除いてください。エビの背中側の中央、透けて見えるくらい浅い位置にある、黒っぽい筋です。背ワタはエビの消化器官(腸)で、砂などが入っていたり、食べるときに生臭さを感じたり、風味が悪くなります。おいしく食べるために、焼く前に取りましょう。
取る際は、竹串を使います。まず、手で殻がついたままのエビを持って軽く曲げ、有頭なら頭と身の節の間から、無頭なら2番目の節あたりに、竹串を横から浅く刺します。背ワタが見つかったら、曲げた状態のエビを親指と人差し指の腹の部分で挟み、背ワタが切れないように竹串をゆっくりと引き上げましょう。
エビは、お腹部分にも「腹ワタ」と呼ばれる黒っぽい筋があります。こちらは消化器官ではなく、神経です。腹ワタが残っていても味に影響はないので、とくに取る必要はありません。
焼いたエビの殻をむくときは、手でかまわない
焼いたエビの殻をむいて食べる際は、キッチンペーパーなどがあると、手をあまり汚さずにむけます。頭付きのときは、キッチンペーパーを使って手でエビの頭を押さえ、まず頭と胴体を切り離し、押さえた頭の中から身を引き抜きましょう。
続いて、胴体についている殻と脚を取っていきます。キッチンペーパーでエビの端を押さえて、胴体の殻の部分を節ごとにはがすようにむいていき、脚も取り除きましょう。箸ではなく、手でむいて問題ありません。
むいたエビの殻や頭は、炒って水分を飛ばし、細かく砕いてパウダー状にしておきましょう。パスタやスープなどの料理の仕上げに、トッピングとして使えて便利です。殻を食べるのが苦手でも、エビの風味が楽しめて、殻の栄養も逃さずとれます。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾