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「結婚式で初めて妻に会った」 9割がお見合い結婚のインド それでも離婚率わずか1%のワケ

公開日:  /  更新日:

著者:中谷 秋絵

「結婚式で初めて会った」…インド人3人の実話

「お見合い結婚が主流」と聞いていたものの、インド人から実際に聞いた話には衝撃を受けました。とくに印象深い3人のエピソードを紹介します。

 1人目は、著者がインドの首都・ニューデリーで働いていたときの会社の上司で、現在は50代になろうかという男性です。その方は「結婚式で初めて妻に会った」と言っていました。お見合い結婚とはいえ、結婚式まで会わないなんて……。しかも、昔の話ではなく、現在でもよくあるパターンのようです。

 2人目は、同じく会社の同僚で20代前半の女性。「今、両親が私の結婚相手を探している」とのことです。お見合い結婚が主流とはいえ、都会では自由恋愛も増えてきたと聞いていたので「首都のデリーで、こんなに若い人でもやっぱりお見合いなのか」と驚きました。

 さらに、彼女は「同じ名字の人としか結婚できない」と言うのです。当時は意味がよくわかりませんでしたが、これはおそらく「同じカースト」を指すのでしょう。インドでは、名字でカーストがわかることもあります。

招かれて行ったインドの結婚式。真ん中にはヒンドゥー教の神様が鎮座する【写真:中谷秋絵】
招かれて行ったインドの結婚式。真ん中にはヒンドゥー教の神様が鎮座する【写真:中谷秋絵】

 3人目は日本で出会ったインド人男性。日本で働いて数年経っていましたが、親が選んだ相手ともうすぐ結婚するそうですが、その相手はインドにおり、やはりまだ一度も会ったことがないといいます。結婚し、その女性を日本に呼び寄せて一緒に暮らす予定なのだとか。

 彼のように海外で暮らすインド人であっても、親や親族が結婚相手を選ぶのは珍しい話ではないようです。国境を越えても、インド人の結婚観は揺るがないのですね。

インド人の離婚率は驚くほど低い

 お見合い結婚をするインド人を見ていて、私の脳内に浮かんだ疑問は「結婚生活はうまくいくのだろうか」でした。

 しかし、インドの離婚率はわずか1%ほど。およそ3組に1組が離婚するといわれている日本とは、状況が大きく異なるようです。なぜ、こんなにも離婚率が低いのでしょうか?

 社会的ステータスが重んじられるインドでは、世間からのイメージが悪くなるため、簡単には離婚できません。また、インドで離婚するためには裁判所の手続きが必要となり、時間と労力を要します。

 そして、インド人は家族愛が非常に強く、個人よりも家族とのつながりを重視する考え方を持つ人が多いことも、離婚率を下げる一因のように感じます。自分の親だけではなく、親族間のつながりも強いのです。

「家族が風邪をひいたから」という理由で会社を休む人も、よくいました。日本ではあまり聞いたことがないセリフだったのですが、誰も気にする様子はありません。日本のように社会保障制度が整っておらず、家族間で助け合わないといけない社会環境も影響しているのかもしれませんね。

 とはいえ、都市部や若者の間では価値観が変わりつつあり、恋愛結婚や離婚率も増加傾向にあるようです。「カーストは気にしない」という層も徐々に増えているので、インド社会は変わっていくのかもしれません。

(中谷 秋絵)

中谷 秋絵(なかたに・あきえ)

取材ライター。新卒3年で心を病み、インドにバックパッカーの旅へ。インドの寛容さに救われ、日系旅行会社で働きながら約2年滞在。その後もたびたびインドを訪れている。2021年よりフリーランスのライターに。自身のインド経験を綴った「どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術」(ANU WORKS出版刊)など、2冊の電子書籍を出版。インドのダンスも踊っている。