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「構造的弱者」への眼差し訴えた東大・上野千鶴子名誉教授の祝辞
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上野名誉教授が新入生に投げかけたプレゼントとは
第二次ベビーブームに生まれ、3人に1人が浪人する受験戦争にもまれたあとにはちょうどバブル崩壊で就職氷河期を経験し、いまだにワーキングプアが多く未婚率も高いとされるいわゆる「ロスジェネ」世代にも、じわっとくるものがある。折しも第5回経済財政諮問会議が、「就職氷河期世代」を「人生再設計第一世代」と名称変更すると発表した。「人生を設計する」という発想自体が、この先行き不透明な時代に即していないと、私は思うが。
“勝ち組”になんてならなくていい。わが子を“勝ち組”にしようなんてことも思わなくていい。大人たちが考えなければいけないのは、“誰も負けない社会”をどう実現するかであるはずだ。
が、厳しい受験勉強を終えたばかりで羽を伸ばしている18歳や19歳の学生には、まだそこまでのメッセージが伝わらないのも仕方がない。参加者から不満の声も上がったとのことだが、上野さんはそれも織り込みずみだろう。
だからこそ大学で学ぶのだ。あとからじわじわわかればいい。そういう問いを、上野さんは新入生に、プレゼントとして投げかけたわけである。あとから「ああ、そういうことか!」とわかったとき、この祝辞の価値がわかる。大学に来た意味はあとからわかる。それでいい。それがいい。
上野さんは、至極まっとうなことを、彼女にしかできないやり方で、彼女のもち味を最大限に生かして、新入生たちに伝えた。見事な祝辞ではないか。
<関連図書>
『ルポ東大女子』(おおたとしまさ著、幻冬舎刊)世の中に存在するジェンダーとキャリアに関する構造的課題は複雑すぎて一部を切り取って解決することができない。そこで「課題先進者」である「東大女子」の視点からそれを解明しようと試みる意欲作。
(おおたとしまさ)