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高齢者ドライバーの実態 赤信号「これ行っちゃっていい?」 教習所指導員が語る
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後を絶たない高齢者ドライバーによる交通事故。19日には、東京・池袋で87歳男性が運転する乗用車が暴走して31歳と3歳の母子の命を奪った。内閣府の発表によると、14年連続で交通事故件数は減少しているにもかかわらず、依然、高齢者の交通事故による死亡率は高い傾向にあるという。超高齢社会に突入した日本。今後も高齢者は増加していくと予測されているが、事故を減らす方法はあるのだろうか。自動車教習所で「高齢者講習」を行う指導員男性に実態を聞いた。
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予約はパンク状態 高齢者講習数は10年で3倍増加
「高齢者講習はほぼ毎日行っています。10年ほど前は週に2~3回程度でしたが、昨年実績で受講者数が3倍に。高齢化を肌で感じています」
そう語るのは、神奈川県の自動車教習所で高齢者講習を行う指導員歴20年のベテラン・Aさんだ。
国は、70歳~74歳までの免許保持者に対し、更新時に2時間の高齢者講習を、75歳以上の高齢者は認知機能検査と高齢者講習を受講するように義務付けている。また、71歳以上は最長で3年に1度更新手続きをしなければならない。高齢者は増加の一途。そして、高齢になると更新頻度は高まるため、利用者は増える一方なのだという。
「予約は4か月待ち。どこの教習所もそんな状態だと思います。けど、神奈川県はまだましなほうで、西日本はもっと熾烈だと聞きます。本人にその意思がなくとも、更新までに受講が間に合わず失効してしまう人も増えているのだとか」
現場は“パンク”状態。しかし、指導員を増やすなどの対応策はないのだろうか。Aさんによると、高齢者講習の指導員は一般的な教習指導資格のほかに、認知機能検査員、高齢者講習指導員としての資格を取得しなければならないという。その際、関東の場合は茨城県にある自動車安全運転センター 安全運転中央研修所にて、泊まり込みでの研修を受講する必要があるそうだ。
「なぜ指導員が増えないか、理由は明白です。正直なところ、高齢者講習はあまり儲けにはなりません。また、高齢者の数もいつかは減るでしょう。資格取得にもお金がかかりますし、そのために人員を増やすのも難しい。そこに投資をしても、会社としては得にならないことは目に見えているからです」