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高齢者ドライバーの実態 赤信号「これ行っちゃっていい?」 教習所指導員が語る
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高齢者講習はあくまで運転したい高齢者をサポートするもの
ここで認知機能検査と高齢者講習の内容について説明しよう。後期高齢者と呼ばれる75歳以上のドライバーは更新時に認知機能検査を必ず受けなければならない。また、一定の違反を行った場合も検査を受ける義務が生じる。これはあくまで運転能力に対する認知機能を簡易的に検査するもので、認知症を判断するものではない。当日の日付・時刻の確認、イラストが描かれたカードを暗記し質問をする、時計描画といったことをしてもらうそうだ。
「誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、認知機能検査と高齢者講習とは免許を取り上げるために実施されているものではありません。検定ではないので、更新前に運転の様子をチェックし、指導をするためのものです」
また、高齢者講習は2時間で行われる短期、3時間で行われる長期の2種類がある。神奈川県の場合はひとりの指導員が一度に受け持つことができるのは3人まで。双方向型の講義と適正検査、また運転実技が行われる。長期講習はこれに、個人指導がありドライブレコーダーで録画した映像を、指導員と一緒に確認し運転上の留意点について指導を受ける。
「混雑緩和のため神奈川県では、1グループ3人の編成を4人にし、受講できる人数制限を緩めることとなりました。しかし、現状であっても移動時間等が全く考慮されていない内容のため、時間が足りていない状況です。また、なかには身体の不自由な方もいて、介助が必要となる場合もあります。何度も4人編成をロールプレイングしてみましたが、現実的ではないと感じています」
現状は実車指導であれば、一人ひとり10~15分ほど時間をかけてS字カーブやクランクなどを行っているという。しかし、受講時間が変わらないまま人数が増えることで、どこかを端折ったり、一人当たりの指導時間が激減してしまうことは瞭然だろう。予約が取れない状況は、少々緩和されるかもしれないが、高齢者ドライバーによる事故が社会問題化しているなか、この施策は受講者にとってもデメリットしかないように思える。
「受講者の皆さんも、年齢を重ねるにつれどこかしら不安を持っているもの。そんな受講者さんに寄り添うためにも、個々の指導時間は大切です。現在、神奈川県では免許満了日から半年前より高齢者講習の予約をすることができますが、予約期間を延ばすなど受講者にとって一番メリットがあるかたちで、混雑緩和策を考えてほしいと思いますね」