恋愛・夫婦

樹木希林さんが貫いた夫婦の絆 私たちはなぜハチャメチャ夫婦に共感するのか

著者:おおたとしまさ

タグ: , , , , ,

「夫婦って何だ?」 9月15日に亡くなった女優の樹木希林さんは、そんな問いを私たちに残していった【写真:photolibrary】
「夫婦って何だ?」 9月15日に亡くなった女優の樹木希林さんは、そんな問いを私たちに残していった【写真:photolibrary】

「結婚」に対する常識や理屈を超越した夫婦

 2018年9月15日に亡くなった樹木希林さん(本名・内田啓子、享年75)。その女優人生では高い演技力で数々の映画やドラマを彩り、ユーモアあふれる人柄やトークでも人気を集めた。一方、私生活で話題となったのはその独特の夫婦生活だ。1973年10月に再婚したロック歌手の内田裕也さん(78)とは1年半で別居。その後、別居生活を続けながらも最期まで離婚しなかった。

 長女・内田也哉子(42)にとっても“ミステリー”だったという夫婦関係。樹木さんと内田さんが描いた夫婦の軌跡を専門家はどう見るのか。育児・教育ジャーナリストで夫婦の関係性についても分析、執筆している、おおたとしまさ氏に寄稿してもらった。

 ◇ ◇ ◇

 私は教育ジャーナリストでありながら、心理カウンセラーの資格ももっているため、心理学的な角度から夫婦関係について物を書いたりメディアにコメントしたりすることも多い。しかし、セックスレスだのDVだの共依存だのという理屈を超越してしまう“夫婦関係”もあるのだなと、認めざるを得ない。2018年9月に亡くなった女優の樹木希林さんとその夫でロックンローラーの内田裕也さんのことである。

 現在、よそ様の夫婦のことであっても、不倫には手厳しい世の中である。しかし樹木さんと裕也さんの夫婦にはそんな次元の批判は誰もしない。2人の関係に心理学的な考察を加えることもできるだろう。しかしどんな考察も、2人の前では野暮になる。

 2人が結婚したのは1973年。1年半後には別居をはじめ、2人はそれから40年以上、最後まで一つ屋根の下に暮らすことはなかった。葬儀で喪主に代わって「あいさつ」をした一人娘の内田也哉子さんが生まれたのは別居生活が始まった後である。2人が“不思議な夫婦”の代名詞的存在であることを前提に、2011年には結婚情報誌「ゼクシィ」のテレビCMで共演。かみ合わないやりとりが話題となった。

 文字通り「浮世離れ」したその関係は、娘・也哉子さんをもってしても「永遠にわかりようのないミステリー」。葬儀の後、也哉子さんの夫の本木雅弘さんは、「こういう夫婦関係も、ありなんだと思った」と語った。それはつまり、この期におよぶまで本木さんですら、「こんな夫婦関係って、ありなの?」と思っていたというわけである。

 樹木さんは「夫婦って何だ?」という大きな問いを、私たちに残していった。