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樹木希林さんが貫いた夫婦の絆 私たちはなぜハチャメチャ夫婦に共感するのか
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私たちはなぜハチャメチャ夫婦に共感するのか
樹木さんの葬儀で、也哉子さんが内田家における本木さんの立場を述べた箇所が傑作だ。
「ときには本気で母の悪いところをダメ出しし、意を決して暴れる父を殴ってくれ、そして私以上に両親を面白がり、大切にしてくれました。何でも明け透けな母とは対照的に少し体裁の過ぎる夫ですが、家長不在だった内田家に静かにずしりと存在してくれる光景は未だにシュールすぎて、少し感動的でさえあります」
也哉子さんは、本木さんと結婚できたことが、樹木さんへの唯一の親孝行だったかもしれないとも言った。「結婚」に翻弄された母に、「結婚」で孝行する娘。その構造自体がかなりシュールである。
お茶の間を巻き込んだハチャメチャな夫婦のあり方が、最後の最後で私たちに何か温かいものを感じさせるのはなぜか。
ひっきりなしに報道される有名人の不倫問題、社会問題化するドメスティックバイオレンス、夫婦間における絶え間ないワークライフバランス闘争、そもそも未婚率の上昇……。「結婚」の煩わしさばかりが取り沙汰され、いつの間にか「結婚」そのものに疑念を抱くようになってしまった私たちは、「どうしようもないことも多いけど、それでも、夫婦って、捨てたもんじゃないよ」と、誰かから言い切ってもらいたかったのではないだろうか。
それが樹木さんの人生の主題だったのかもしれない。本人には、そんな“つもり”はさらさらなかったであろうが。
※*はいずれも、2009年2月20日の産経新聞に掲載された樹木さん自身の言葉。
(おおたとしまさ)