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認知症の父、鬱状態の母 離れて暮らすアラフィフの娘が向き合って気付いたこと

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

病院に行くもアルツハイマーではない!? 認知症の種類と症状とは

 さすがに異常を感じて、父を病院に連れていき脳を検査してもらいましたが、認知症の方の6割が当てはまるというアルツハイマー型認知症の症状は認められないとのこと。しかし、脳梗塞を起こした跡が、脳内にいくつもあるというのです。認知症と一言でいってもその原因はさまざま。

・アルツハイマー型認知症:約6割
・血管性認知症:約2割
・その他(レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症など):約2割

といわれているそうです。

 つまり、父の認知症は、血管性認知症のひとつである可能性が高いということ。この診断には、はっきりいって愕然としました。

 アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症であれば、対症療法が可能で、薬によって症状の進行を遅らせることができるといいます。そして、血管性認知症は、高血圧、糖尿病などを治療することで予防や進行の抑制ができるといわれますが、残念ながら父の場合はコレといった治療方法はなく、これ以上脳梗塞を起こさないようにする以外、対処の方法がなかったのです。

 塩分控えめな食事。運動。そして、水分をたくさん摂ること。これが脳梗塞を起こさないために最低限必要なことなのですが、ここで困ったことが起きました。戦中生まれで「昭和な男」として生きてきた父の大好物は、こってりギトギトのラーメン。運動は、ゴルフの打ちっぱなしで小一時間遊んでくる程度。夜寝る前に水を飲むと、トイレに行きたくなるから……と、こちらの提案はことごとく「NO」と首を振るではありませんか!

そうして父の認知症の症状は進み、被害妄想に振り回される日々に

 父の認知症は、一進一退を繰り返しながらも、悪化を続けました。76歳となった今年は、被害妄想が激しくなり、最初のうちは父の発言に右往左往させられる日々が続きます。

「反社会的団体に目を付けられて、お金を払わなければならなくなった。お金を払わないと殺される!」
ーー実は、駅前の駐車場に車を停めたのを忘れて徒歩で帰宅してしまい、2日後に車を出しに行ったら、すごい高額になっていて、こんな金額になるのはおかしい!! 反社会的団体のせいに違いない!! もしかしたら俺、殺されちゃう!? となっただけ。

「あるべきはずのお金がない。近所の人が盗んだに違いない!」
ーー実は、自分でお金を隠したり、置いたりした場所を忘れていただけ。

「財布と通帳と携帯電話が入ったカバンを盗まれた!」
ーー実は、なじみのラーメン屋に忘れてきただけ。

 こんなことが、毎日のように起こるのです。認知症とはいえ、普段は不自由なく生活をしているので、はじめのうちはまさかこれらのことがすべて、認知症が中核症状と呼ばれる状態まで進行した父親の妄想であるとは思いもしませんでした。

 なので、悪いとは思いましたが、父を思いっきり叱りつけてしまっこともありました。しかし、叱ったり怒鳴ったりしたところで、改善などされるべくもありません。なにせ相手は「病気」なのです。そのことに2~3か月ほど振り回されたのちに、ようやく気付くに至ったのです。