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【2023年】暦の上では夏が始まる5月 季語に「麦秋」がある理由とは 二十四節気で知る四季

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

小満は「ほっと一安心」する時期という意味も

麦秋とは初夏の季語(写真はイメージ)【写真:写真AC】
麦秋とは初夏の季語(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 立夏の後に訪れる8番目の二十四節気が「小満」です。日を追うごとに気温も上がって、万物が天地に満ち始める頃とされています。この季節に麦の穂が実るので、ほっと一安心する、小さな満足を得ることから「小満」となったともいわれているそうです。

 暖かくなり麦畑が黄金に色づきます。「麦秋」という言葉は、この時期の季語です。初夏ですが、麦にとっては「実る秋」という意味があります。

梅雨前の活気に満ちあふれる時期

美しい紅花(写真はイメージ)【写真:写真AC】
美しい紅花(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 あらゆるものが活気に満ちあふれ、健やかに育つ小満には、麦の収穫や田植え、蚕の世話などを行います。小満にあたる七十二候は次の通りです。

○「小満」(5月21日頃から)
初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月21日頃
次候:紅花栄(べにばなさかう)5月26日頃
末候:麦秋至(むぎのときいたる)5月31日頃

 この時期は蚕が元気に桑の葉を食べて成長していきます。美しい絹糸を紡ぐ蚕は「おかいこさま」とも呼ばれてきました。また、紅花(ベニバナ)とは古くから染料や生薬として用いられてきた花。ベニバナが一面に咲くと、化粧の紅を取るための花摘みが行われてきました。

 麦の収穫期なので、麦にまつわる季語がいくつかあります。この頃に強く吹く風を「麦風」や「麦嵐」、降る雨を「麦雨」とも言います。麦は古くから日本人の生活に重要な役割を担ってきました。快適な気候が続いた小満の終わり頃に天気が崩れることを「走り梅雨」や「梅雨の走り」などと呼びます。いったんは晴天に戻りますが、その後、本格的な梅雨を迎えます。

【参考】
「365日を豊かに過ごす 日本の四季、二十四節気、七十二候」(宝島社)
「にっぽんの七十二候」(エイ出版社、エイはきへんに「世」)
「絵で楽しむ 日本人として知っておきたい二十四節気と七十二候」水野久美書(KADOKAWA)
「日本のしきたりがまるごとわかる本」新谷尚紀監修(晋遊舎)
国立天文台「暦Wiki」七十二候
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FBCB7BDBDC6F3B8F5.html

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu