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ミカンはなぜ“揉むと甘くなる”のか 秘密はクエン酸 ビタミンCだけではない栄養とは
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教えてくれた人:和漢 歩実
日本の冬を代表する果物といえば、温州ミカン(以下、ミカン)。やわらかい皮がむきやすく、手軽に食べられることから、幅広い年代に人気です。風邪が気になるこれからの季節、できれば甘いミカンを食べたいところ。「揉むと甘くなる」といわれていますが、これはなぜでしょうか? ミカンの栄養成分について、栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
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ビタミンCだけではないミカンの豊富な栄養
ミカンの栄養といえば、ビタミンCのイメージが強いかもしれません。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、ミカン100グラムあたりのビタミンCは32ミリグラム。冬の時期に食べられる他の果物と比べると、リンゴは4ミリグラム、イチゴは62ミリグラムです。ミカンのビタミンCはリンゴより多く、イチゴよりは少ない量になります。
実は、ミカンにはビタミンC以外の栄養も豊富。それぞれを解説しましょう。
○βカロテン
体内で必要に応じてビタミンAに変換されるプロビタミンAの一つ。皮膚や粘膜を強くしてウイルスの侵入を防ぐ効果が期待できます。
○クリプトキサンチン
βカロテンと同じプロビタミンAです。クリプトキサンチンは近年、発がん抑制や老化防止、生活習慣病発生のリスクを低下させる可能性についても注目されています。
○ヘスペリジン
ポリフェノールの一種。白い筋や袋の薄皮に含まれ、血流促進や毛細血管を強化して血流改善に役立つ成分として知られています。
○カリウム
ミネラルの一種。余分な水分や塩分を排出する働きがあり、高血圧予防が期待できます。
○食物繊維
ミカンは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランス良く含んでいるため、便通を促したり血糖値の上昇を抑えたりするなどの効果が期待できます。
この他、疲労回復に役立つクエン酸や細胞増殖に関わりがあるとされる葉酸、骨や歯の構成に欠かせないリンも含まれています。またミカン1個の可食部を80グラムとすると、エネルギーは約40キロカロリーなので比較的低めといえるでしょう。
ミカンを揉むと本当に酸味が減るのか?
ミカンは「揉むと甘くなる」といわれています。これに関係しているのは、前述したクエン酸です。柑橘類に含まれるクエン酸は私たちの疲労回復に役立つ成分ですが、ミカン自身の修復にも消費されています。
ミカンを揉むなどして軽い衝撃を与えると細胞に傷が付き、ミカン自身がその傷を修復するためにクエン酸を消費するといわれています。酸味成分でもあるクエン酸が減るため、食べた時に甘く感じるとされているのです。
ただし、ミカンを必要以上に揉むと食感が損なわれるのでほどほどに。もし酸っぱいミカンに当たったら、揉んでみると良いかもしれません。今年の冬も、栄養価に優れた旬の果物を堪能したいですね。
(Hint-Pot編集部)