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「彼らは暴力的でも、攻撃的でもない」 初来日のメキシコ人が魅了された日本の伝統文化とは
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異国を訪れると、まず観光したいのが誰もが知る有名なスポットです。ニューヨークなら自由の女神、フランスならエッフェル塔、中国なら万里の長城…と、各地に代表的なシンボルがあります。一方で、スポーツや観劇などその国でしか開かれないライブイベントを目的にする旅もあります。初来日したメキシコ人のロベルト・ドミンゲスさんが興味を示したのは日本の伝統文化でした。
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「それは私にとって非常に並外れた競技です」
首都メキシコシティーから15時間のフライトで日本に到着したロベルトさん。キャリーケースを持って渋谷に到着するや、きょろきょろと周囲を見回し、とてもうれしそうです。左には忠犬ハチ公像、そして目の前には大勢の人が行きかうスクランブル交差点がありました。これから始まる東京での旅に、興奮を隠しきれません。
日本を訪れた目的の一つはイベント観戦にありました。
「相撲が見たいです。今はそのシーズンか分かりませんが、相撲は今、行われていますか?」
日本の伝統文化で国技でもある相撲をぜひ、間近で見てみたいとのことです。
なぜロベルトさんは相撲に興味を持ったのでしょうか。
「相撲は世界的に有名です。そして私は力士を見るのは驚くべきことだと思います。なぜなら彼らは幼い頃から相撲を取るために体を準備している。それは私にとって非常に並外れた競技です」
力士になるには、まず新弟子検査をパスしなければなりません。現在の資格は身長167センチ以上、体重67キロ以上(一部例外あり)が必要です。その後は相撲部屋に入門し、親方の指導のもと、厳しい鍛錬が始まります。体作りも修行の一環で、ちゃんこ鍋に代表される伝統があります。まわしを締め、土俵の上では150キロ近い肉体がぶつかり合います。他のスポーツでは味わえない迫力があり、インバウンド(訪日外国人)にも大人気です。
メキシコで盛んなスポーツと言えば、サッカーや野球、ボクシングです。
また、ユニークなものではルチャ・リブレというプロレスもあります。華やかな覆面マスクマンたちが空中技を駆使し、リングの上で激闘を繰り広げます。実はメキシコは米国、日本と並ぶ世界3大プロレス大国。“千の顔を持つ男”“仮面貴族”の異名を持つミル・マスカラスやエル・サント、カネック、ミスティコ…。世界的に知られるレスラーを数多く輩出しています。
「ルチャ・リブレは美しい。とても素晴らしいです。彼らはジャンプして、空中でひねります。それはクレイジーです」
自国の文化をこう評したロベルトさんですが、同じ格闘技でも、相撲のユニークさには驚きを隠しません。
「なぜなら私にとって、彼らが実践している文化はまったく異なるからです。たとえそれが闘いであったとしても、それはとても名誉ある闘いです。他の肉体を使うスポーツほど暴力的でなく、攻撃的でもなく、汚いわけでもありません。肉体のぶつかり合いであっても、よりクリーンな闘いです。私はそう思います」
1500年の歴史を持つ相撲。「相撲はその年の農作物の収穫を占う祭りの儀式として、毎年行われてきた。これが後に宮廷の行事となり300年続くことになる」(日本相撲協会の公式サイト)という神事のような格式を持つ伝統文化です。
勝ち負けを競うだけでなく、土俵の上での力士の所作は、非常に奥深いものがあります。一つ一つの意味は分からなくても、外国人に伝わるものがあるのかもしれませんね。
本場所以外にも部屋によっては、朝稽古の見学を受け付けているところもあります。タイミングが合えば、ぜひ生の力士を見て、東京観光の思い出にしてほしいものです。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)