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仕事・人生

49歳で出産の小松みゆき、共働き推奨は「女の人に負担を増やしすぎ」…実の母による育児置き去り「何のために産んでるの」

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著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼 一夫

「これで産めますか?」 俳優業を続けながら抱いた葛藤

 若い時から俳優として活躍した小松さんも、なかなか結婚・出産には踏み切れなかったそうです。

「男女雇用機会均等法ができたのに、同じ仕事していても男性より女性は収入が少なく、なおかつ妊娠・出産して、キャリアを止められて、その後、職場に戻っても来れない。これで産めますか? っていうのはずっと思っていました。中には肩書きがついて働きがいが出てきた人もいたと思います。それでもやはり産休をとってしまうと戻ってくる場所がなくなっていました。それでは産みたいとは思わないよねっていうのは、もうその時代からみんな話しているんですよ。『DINKs』(ディンクス=共働きで子どもを持たない夫婦)がはやったのもこの頃でした」

 90年代に入ると、バブルが崩壊。就職氷河期が到来し、日本の経済は一気に冷え込みます。景気は上向くことなく、非正規雇用が拡大され、日本人の貧困化が加速しました。どれだけ働いても賃金は上がらず、未婚・晩婚化に拍車がかかり、期待された「第三次ベビーブーム」の到来は絶望的に。「失われた30年」などとやゆされ、現在を迎えています。

「少子化は将来の日本の国の力に影響すると思います。まずは『減らさない』という話をしないといけないと思うんですよ。今、少子化で増やせって言ってますけど、増やす前に減らさない努力をしないといけない」

 1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2023年に1.20と過去最低を更新。東京では1を切っています。2を下回ったのは実に1975年のこと。2人目、3人目というよりも、まずは1人産むことに高いハードルがあります。

 もちろん、子どもを3人、4人と産みながらバリバリ仕事と両立している母親はいます。また富裕層であれば、ベビーシッターの手を借りたり、働く時間を調整することも可能でしょう。ただ、そのような世帯は現実的には限られています。

「働けないですよ。家のこと気にしながら、病気になったら呼び出されて帰らなくてはならない。ハラハラしながら仕事して、自分の寝る時間を削って会社のことを家に持ち帰ってやっている人もいれば、眠れない中お弁当作らなくてはいけないとか、家のこともやらなくてはいけない。買い物に行き、洗濯、掃除とかもやらなくてはいけない。そういう時間も仕事に取られたらできなくなるわけですよ。知人の中には学校の行事でさえ参加できない人がいます。参観日とか平日にあるじゃないですか。土日仕事の方だと運動会や遠足にも行きづらい。これって健全じゃないですよね」

 仕事と育児を両立しているといっても、実際は子どもを第三者が見ている状況があります。0歳から保育園に預けるのも珍しくなくなり、3歳まで親の手で育てるほうが望ましいとされる「3歳児神話」は崩壊。一方で、本来の“母親の意思”は置き去りにされています。

「もったいないですよ。何のために産んでるのって思います。いい時期に育てられなくて、かわいい時期に一緒にいられなくて、産んで誰かの手に預けて働きに行くって、産むマシンなのって思っちゃいますよね。だったら女の人の子宮で産まなくてよくない? ってなっちゃう。妊娠中にここ(お腹)で育ててる楽しみもあれば、いい子いい子と声をかけて、肌が密着してそばにいられる時間があってこその子育てなのに、無理やり引き剥がさないでほしいなとは思います」

「少なくとも小学校が終わるぐらいまでは…」

 日本人の平均年収が470万円にとどまる中、経済的に共働きをせざるを得ない家庭もあります。親のどちらか一方が家計の大半を支える「大黒柱」という言葉も死語になりました。少子化をストップするには、東京都のように産んでも仕事を続けられる育児環境を整備するか、子どもが多かった時代と同じ専業主婦・主夫世帯を増やしていく方法などが浮かびますが、小松さんは理想として後者を後押しします。

「少なくとも小学校が終わるぐらいまでは片方の親が働いて、もう片方の親は育児に専念できる環境のほうがいい。じゃないと産めないし、育てられない」と訴えました。

 基準にしているのは、あくまで“子どもにとって健全かどうか”の視点です。今の施策は、あまりに親都合に寄りすぎていると受け止めています。専業主婦・主夫が保険料を納めなくても年金を受け取れる「第3号被保険者制度」(主婦年金)が段階的廃止の流れになっていることについても、反対の考えです。「そういう流れで子ども産みたいって思えますか。ますます産みづらくなると感じています。せめて最終子が小学校を卒業するまでは免除でいいんじゃないのかなって」。安心して育児に専念できる環境が整えば、「第2子、第3子、第4子と産みたい人が増えてくる」との見方を示しました。

 現在は俳優業のほか、インティマシー・コーディネーターを務めるなど活躍の幅を広げている小松さんですが、仕事は極力セーブしていると言います。夫は帰宅が遅く、平日の育児は小松さんが引き受けています。日本では共働きでも家事の分担ができずに、妻に負担がかかっているケースが多いのも課題です。1馬力でも家計が成り立つようにするには、もちろん収入のアップが欠かせません。それには、給料から差し引かれる税金の使い道や社会保険料の見直しを含めた国のサポートも必要だと主張します。

「現実を受け止めて、それに対して社会保障をどう回すかっていうことじゃないですか。ずっと専業主婦やりたい人ばかりじゃないんですよ。働いて自立したいという人もたくさんいます。子どもが小学校を卒業するぐらいまでは働けなくてもその後はキャリアに戻れるようにしてほしい。一般企業に勤めていたら国がテコ入れしないとどうにもならないですから。どうにかこの期間だけは子育てに専念させてほしいです」

 少子化をどう食い止めるかは2025年の大きなテーマです。夫婦そろって「産みたい」という気持ちになれるように、さまざまな改革が求められています。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼 一夫)