Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

会席料理の漬物から食べるのはマナー違反? 意外と知らない和食のお作法

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

和食コースの締めで出てくる香の物(写真はイメージ)【写真:写真AC】
和食コースの締めで出てくる香の物(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 会席料理など和食のコース料理の最後に、セットで出てくるごはんと汁物の椀、そして漬物の香の物。食事の締めにおいしい漬物でごはんを食べたいところですが、香の物から箸をつけるのはマナー違反だといわれています。それはなぜなのでしょうか。また、漬物をお新香と呼ぶこともありますが、その違いとは? 香の物について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

香の物の由来、お新香の意味とは

 香の物は、日本の伝統的な漬物の意味です。香の物と呼ぶ由来には諸説ありますが、平安~鎌倉時代に香木の香りをかぎ分ける「聞香(もんこう、ぶんこう)」という遊びが関係しているとみられています。聞香の際には、漬物を食べて臭覚をリフレッシュさせていたそう。そこから「聞香で使う物」という意味で、漬物を「香の物」というようになったといわれています。

 また、「香」という言葉自体には「みそ」の意味があり、古くはみそ漬けの野菜を指していました。その後、糠(ぬか)漬け、塩漬け、粕漬けなど漬物全般を「香の物」と呼ぶようになったと考えられています。

 同じく漬物を「お新香」と呼ぶことがありますが、厳密にいうと、お新香は本来、短い時間で漬けた浅漬けを指します。お新香は漬かり方が浅いため、新鮮で調味料よりも野菜の香りがすることから、「新しい香り」という意味で呼ばれるようになりました。したがって、お新香は香の物の一種になります。

締めの香の物、いつ食べる?

 和食店で提供される会席料理などのコースの最後には、一般的にごはんと汁物、香の物が提供されます。何から箸をつけて良いか迷うかもしれませんが、まずは汁物から口にしたほうが良いでしょう。箸が湿るので、後にごはんの粒がくっつくのを防ぐこともできます。ごはんを少し食べたら、その後は香の物など交互に食べ進めていくとスマートです。

 香の物から先に食べるのがマナー違反とされる理由は、「今までの食事がおいしくなかったというサインになる」といわれていたからです。今は気にしないカジュアルな和食店も多い傾向にあるかもしれませんが、感謝の気持ちを込めて、昔ながらの作法通りに香の物から食べることは避けたほうが。小粋に映るでしょう。

 気をつけたいのは、香の物をごはんの上にのせて食べることです。マナー違反になるので、それぞれ別々に箸をつけましょう。

ちなみに汁物は「止め椀」と呼ばれ、会席料理では止め椀が出てくるまでにお酒を済ませるのがマナーとされています。料理がおいしいと、ついお酒が進みがちになりますが、スマートな締めを心がけましょう。

 食事は、周囲の人と楽しいひとときを共有する大切な時間です。堅苦しく考えすぎる必要はありませんが、無意識のうちに相手を不快にさせないためにも、基本的な作法を心得ておきたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾