からだ・美容
「おしりがかゆい」のは病気? なりやすい人の傾向や日常的な対策 医師に聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:鈴木 隆二

寒さと乾燥で起こりがちな体のかゆみ。とくに、おしりのかゆみに悩んでいる人もいるかもしれません。肛門の周辺は自分の目で確認しにくく、相談しづらいケースもあるでしょう。女性に多いかゆみの原因や日常の対策、放置した場合のリスクなどを、消化器外科専門医で医療法人社団筑三会の鈴木隆二理事長に伺いました。
◇ ◇ ◇
なぜ、おしりがかゆくなる?
女性のおしりのかゆみについて、原因として考えられることは、肛門周辺の皮膚の乾燥や刺激です。とくに空気が乾燥しやすい冬は、皮膚のバリア機能が低下するため、かゆみが強くなる傾向があります。
また、洗浄便座の使いすぎや、トイレットペーパーで強く拭くことによる刺激も、かゆみの引き金になることがあります。清潔に保つことは重要ですが、過度な洗浄は逆効果となることがあるのです。
おしりがかゆくなりやすい人には、いくつかの傾向がみられます。たとえば、アトピー性皮膚炎などの乾燥肌体質の人や敏感肌の人。また、便秘や下痢といった便通異常がある人は、肛門周囲への刺激が増えてかゆみが生じやすくなります。さらに、糖尿病の人は高血糖状態が皮膚の免疫機能を低下させ、感染や乾燥を引き起こしやすくなるため、注意が必要です。
おしりのかゆみを軽減する日常的な対策とは
おしりにかゆみを感じた場合の日常的な対策としては、肛門周囲を優しく洗い、しっかり乾燥させることが基本です。石けんは低刺激のものを使用し、ゴシゴシこすらず、やわらかいタオルで軽く押さえるように拭き取りましょう。
肛門周辺の皮膚の乾燥が気になる場合は、無香料の保湿クリームを薄く塗ることで、皮膚のバリア機能を保つことができます。さらに、通気性の良い下着を選び、長時間の座りっぱなしを避けることも有効です。
適度な清潔さを保ちつつ、過度な洗浄は避け、保湿を心がけることが重要です。同時に、便通を整えるための食生活の見直しも、おしりのかゆみを防ぐポイントになるでしょう。
おしりのかゆみが続くなら医療機関の受診を
これらの対策をしてもかゆみが続く場合や、悪化してしまう場合は、放置せずに医療機関を受診してください。かゆみが慢性化すると、皮膚が厚く硬くなる「苔癬化(たいせんか)」や、かき壊しによる細菌感染を引き起こすことがあります。
性感染症や肛門周囲の皮膚疾患、まれに直腸がんといった重篤な疾患が隠れていることもあるため、自己判断せずに専門家の診断を仰ぎましょう。
おしりのかゆみで医療機関を受診するなら、肛門科(大腸肛門外科)や消化器内科、皮膚科が適しています。治療としては、ステロイド軟膏や抗真菌薬、保湿剤をはじめ、必要に応じて内服薬が処方されます。性感染症が疑われる場合、婦人科や性感染症外来での検査も重要です。
おしりのかゆみは、恥ずかしいものではありません。適切な対処で改善できることがほとんどです。気になる症状があれば、早めに専門医に相談しましょう。
(Hint-Pot編集部)
鈴木 隆二(すずき・りゅうじ)
医療法人社団筑三会理事長。消化器外科専門医として「筑波胃腸病院」「千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザ」で診療にあたる。聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター助教を経て、2020年、現理事長に就任。