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ネクタイから出ている“謎の糸” 切りたくなっても「ダメ!!!」…職人の注意喚起に納得 「有益情報」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

ネクタイの扱いに慣れていないと、思わぬ失敗をしてしまうことが…(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
ネクタイの扱いに慣れていないと、思わぬ失敗をしてしまうことが…(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 スーツの着こなしにまだまだ慣れず、扱い方に困っている新社会人もいるでしょう。正しい取り扱いをして、できるだけ長く使いたいですよね。X(ツイッター)では、「職人からのお願いです」と書かれた投稿が話題になっています。写真に写っているのは、ネクタイの裏側にある“謎の糸”。なにげなく切ってしまいそうなこの糸ですが、実はネクタイの命ともいえる重要な存在なのだそう。投稿者であるネクタイ職人のしゃく(@shakunone)さんに、詳しいお話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

ネクタイの“謎の糸”の正体とは

「ダメ!!! 絶対に切らないで!!!」

 そんな強い書き出しのコメントを添えて投稿された写真。そこには、裏返した状態のネクタイの先端が写っています。一部が黄色い円で囲われており、そこには小さな輪状の糸が。

 これは「スリップステッチ(たるみ糸)」と呼ばれるもの。高級ネクタイの仕立てにみられる技法で、ネクタイに伸縮性と自然なドレープをもたらす役割を担っています。これを間違って切らないよう、しゃくさんは次のように注意喚起しました。

「こんな糸が出ていても、無理に引っぱったり切ったりしないで。これは『スリップステッチ』。ネクタイの伸縮を助ける大切な糸です。切るとネクタイがバラバラになります。新社会人のみなさんにも、大切に仕立てた1本を長く大切に使ってほしい。職人からのお願いです」

 この投稿には、約7000件の“いいね”が集まりました。リプライ(返信)や引用リポストには「ありがとう!」「真っ先に切るわ これ」「有益情報」「知らなかった」「嘘ではない。この糸はハンドメイドの証なのだ」などのさまざまな声が寄せられています。

 リプライのなかには「切ってはいけない糸は見えないところに出してほしい」といった声もみられました。しゃくさんは、「ゆるみが出た場合のメンテナンスにも使用する重要な糸なので、見えるように出しています」と話します。

「ネクタイの『命』ともいえる糸」

職人が「絶対に切らないで」と呼びかけるネクタイの糸【写真提供:しゃく(@shakunone)さん】
職人が「絶対に切らないで」と呼びかけるネクタイの糸【写真提供:しゃく(@shakunone)さん】

 投稿者のしゃくさんは、創業56年を誇る縫製工場「株式会社笏本縫製」の3代目。自身が立ち上げたネクタイブランド「SHAKUNONE(シャクノネ)」は、「日本一前向きになれるネクタイ」をコンセプトに掲げ、丁寧なものづくりを続けています。4月には地元・津山でスーツのオーダー会も開催予定なのだとか。

 注目を集めたスリップステッチですが、しゃくさんはこれまでにも、たびたび注意喚起を行っています。そこには、職人としてネクタイを大切に、長く使ってほしいという思いがありました。

「スリップステッチはハンドメイドの証でもあり、ネクタイの『命』ともいえる糸です。この糸がついていることで、ネクタイがより伸縮性を持ち、着用後に結び目を引っ張る際、自然に整ってくれるのです。また、長時間の使用でゆるんだ結び目も、軽く引くだけで元の形に整いやすくなるため、美しい状態を長く保つことができます。市場で説明されることはなかなかありませんが、職人にとっては当たり前です。そのため、弊社では必ず説明文をつけてお届けしています」

 いつまでも大切に使ってもらえるよう、注意書きを添えているため、しゃくさんのもとには、切ってしまったという相談が寄せられることはほとんどないそうです。しかし、ごくまれに「切ってしまった」と連絡がくることも。

「あまりネクタイに慣れていなく、ハードに使い続けているなかで、そういったことはたまに起こります。また、年配の方からは、長年大切にしていたネクタイが破損してしまったと相談を受けることも。その修繕は、このスリップステッチを職人が抜き取って、仕立て直すことで対応できることがあります。大事に使いたいという気持ちが伝わってきます」

 スリップステッチがないネクタイもありますが、その有無でしなやかさや耐久性に明確な違いが出ると話します。もし誤って切ってしまった場合は、できるだけ早く専門の職人に見せたほうがいいようです。

 新社会人になることを記念して、素敵なネクタイをプレゼントした人や、贈られた人もいるでしょう。大切に使い続けていきたいですね。

(Hint-Pot編集部)