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飲酒で乳がん発症のリスク増…気をつけたいお酒の飲み方 医師に聞いた
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教えてくれた人:矢加部 文

お酒を飲む機会が増える春。楽しくて、ついお酒も進みがちですが、飲みすぎには注意が必要です。とくに女性の場合、体格などから男性よりも酔いやすい傾向にあるほか、過剰な飲酒によって乳がんの発症リスクが増えるといわれています。乳がんと飲酒との関係について、日本乳癌学会乳腺認定医である矢加部文医師に話を伺いました。
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飲酒と乳がんの関係とは
乳がんのリスク要因は、まだすべてが明らかになっているわけではありませんが、いくつかの要因が考えられています。そのなかのひとつが、飲酒習慣です。
国立がん研究センターの多目的コホート研究によると、1日にビールをコップ2杯(中瓶の1本、約20グラムのアルコール)以上飲む女性は、飲酒しない女性に比べ、乳がんのリスクが75%程度高くなると報告されています。
お酒を飲むと、体内のエストロゲン(女性ホルモン)濃度が上昇することがわかっています。エストロゲンは乳腺に作用し、乳がんの発生や進行を促す可能性があるため、濃度が高い状態が続くと乳がんのリスクが高まるといわれています。
さらに、一般的にがんの発症リスクとして挙げられるのが、アセトアルデヒドという化学物質。アルコールは、体内でアセトアルデヒドに分解されますが、この物質にはDNAを傷つける性質が。細胞の突然変異を引き起こすことで、乳がんをはじめとするがんの発症リスクを高める要因になるとされています。
また、アルコールはカロリーが高く、飲酒量が増えると肥満の原因にもなりかねません。一緒に食べるおつまみ類も、脂質が多くなりがちに。肥満になるとエストロゲンの産生を増加させ、乳がんのリスクを高める要因のひとつになるため、注意が必要です。
乳がんになりやすいお酒はある? 術後の飲酒の影響は
お酒の種類によって、乳がんになりやすくなったり、なりにくくなったりするわけではありません。また、アルコール度数が低ければ、乳がんの発症リスクを避けられるものでもないです。摂取するエタノールの総量が、リスクと関連すると考えられています。
もし乳がんと診断され、手術した場合、術後の腫れや内出血がある時期は、少量であっても飲酒は控えるべきです。それ以降についても、過度な飲酒は避けてください。
飲酒によって乳がんが再発しやすくなるなどの可能性は、低いと考えられています。ただし、過剰な飲酒を続けると、患部があった部分の反対側の胸や残した乳房について、新たな乳がんの発症リスクが上がる可能性はあります。また、乳がん以外の病気のリスクが高まることも否定できません。
できる限り、健康的に楽しくお酒を飲むことを心がけましょう。厚生労働省がまとめた「飲酒ガイドライン」によると、生活習慣病のリスクを高める飲酒量は、女性は20グラム以上(1日あたりの純アルコール量)です。純アルコール量とは、お酒に含まれるアルコールの量を示します。
純アルコール量20グラムをお酒の量に換算すると、アルコール度数5%のビールならロング缶や中瓶1本にあたる500ミリリットル、12%のワインなら小グラス2杯分の200ミリリットル、15%の日本酒なら1合弱、25%の焼酎なら100ミリリットルです。お酒との健康的なつきあい方を心がけましょう。
後編では、女性とお酒の上手なつきあい方についてお届けします。
(Hint-Pot編集部)