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ロボット手術で腎臓がんを切除した57歳男性 予定手術時間が2倍になったワケ
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いまや日本人の2人に1人ががんに罹患するといわれる時代。早期発見の必要性を頭では理解しているものの、日常の忙しさを理由に、検査を受ける機会を先送りにしてしまう人も少なくないでしょう。今年、7年ぶりの人間ドックで初期の「腎臓がん(腎細胞がん)」が見つかった、元新聞記者で57歳の芳賀宏さん。最新のロボット手術を受け無事成功したものの、予定手術時間を大幅にオーバー。術後にわかった自分の「体内の実情」に呆然としたそうです。その理由とは。
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メリットが多いロボット手術を選択
7年ぶりに受診した人間ドックで発見された腎臓がんは、幸いにも進行度が最も低いステージ「Ia」でした。がんは約3センチの嚢胞という水袋のようなものの中にあり、標準治療として主流になりつつある「ロボット手術」が決まりました。
「腎臓は1つあれば生きられますが、今後の人生を考えたら温存したい。まだ小さいので部分切除にしましょう」と担当医師から説明がありました。
「死ぬレベルではない」とわかれば、元記者の習性なのか性格上の追求心なのか、不安よりロボット手術への好奇心が上回ります。手術をサポートしてくれるのは、米インテュイティヴ・サージカル社が開発した内視鏡支援ロボット「ダビンチ」。8ミリ~2センチ程度に切開した部分から、カメラや電子メスなどを装着した4本のロボットアームを差し込み、医師が3D映像を見ながら手術を行います。
医療関係者によると、世界で約7000台、日本でも600台以上が稼働。従来の開腹手術に比べ負担が少なく、人間の手より繊細な動きができ、出血も少ないなどメリットは多いとされています。
手術時間を大幅にオーバーした理由とは
当日は午前9時に手術室へ入り、全身麻酔であっという間に意識を失いました。HCU(高度治療室)で目を覚ましたのは、午後3時過ぎ。当初、3時間程度で手術は終わると聞いていたので、想定を超える時間の経過に一瞬戸惑ったのも事実です。ただし、その理由は自分自身にあった「実情」をのちに知ることになります。
実は、術前の話になりますが、医師に「ダビンチ手術の映像を見せてほしい」と要望していました。近年はYouTubeなどでも観ることはできますが、やはり自分の体のことですから興味があります。
内臓や出血の映像は苦手だという人が少なくないなか、看護師さんたちには「珍しいですね」と言われました。しかし、狩猟をしたシカなどを自分で解体しているので見慣れていますし、何より好奇心が先に立ちます。医師からも「そんな患者さんはあまりいませんが、理解してもらうためには観てもらったほうがいいかもしれません」という本音が聞けました。
そんな経緯があり、ロボット手術後を経て一般病棟に戻ってから数日後、映像を見せてもらえることになりました。術後に状況説明を受けることはあるでしょうが、やはり百聞は一見にしかず。執刀医の説明で鮮明な映像を観るのは非常に興味深く、手際や状況判断など外科医が技術者であることもよくわかります。
そして、自分の手術に時間がかかった原因もすぐにわかりました。それは「内臓脂肪」です。高血圧や糖尿病といった生活習慣病、動脈硬化や心筋梗塞などの原因のひとつとされるのは、よく知られているところ。実際、映像に映し出された自分の腹の中は、薄黄色の脂肪にびっしりと覆われていました。
「患部にたどり着くのに30分くらいの予定でしたが、90分かかりました」
しかも、腎臓表面の膜に脂肪が癒着していたことで、想定より多く出血し、止血にも時間と手間がかかったそうです。場合によっては負担の大きい開腹手術に切り替える必要もあるそうで、「医者としては内臓脂肪がないほうが楽です」と担当医師はきっぱり。思った以上に内臓脂肪は「やっかいもの」なのです。