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妊娠中に席を譲ってもらえずモヤモヤ…優しさの“ミスマッチ”なくすマークに反響 「素敵なものがあるんですね」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

マタニティマークだけではなかなか気付いてもらえないことも(写真はイメージ)【写真:写真AC】
マタニティマークだけではなかなか気付いてもらえないことも(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 周囲に妊娠中であることを伝えるマタニティマーク。2006年に厚生労働省がデザインを公募、現在では広く認知されており、主に公共交通機関などで席を譲る際の目印となっています。一方で、マタニティマークをつけていてもなかなか気付いてもらえず、モヤモヤした経験を持つ人も。席を譲ってほしい人と、譲りたい人とのマッチングを図る目的で製作された「席ゆずりますマーク」がネット上で反響を呼んでいます。発案者の男性に、マーク開発の経緯を聞きました。(取材・文=佐藤佑輔)

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「席を譲りたい」という意思表示ができるマークがあればいいのにと感じ、製作を開始

 先月10日、電車内で「席ゆずりますマーク」を見かけたことを報告する投稿が拡散。投稿には5000件を超えるリポスト、12万件もの“いいね”が寄せられており、「私妊婦じゃないんだけど、なんかめっちゃ嬉しい」「世の中には素敵なものがあるんですね」「素敵すぎる…! 発案者様、前にでてきてください!!」など、感動の声が相次いでいます。

 発案者は都内のIT企業でシステムエンジニアとして働く35歳の椎野祐輔さん。5年前に妻が長男を妊娠した際、マタニティマークだけでなく、「席を譲りたい」という意思表示ができるマークもあればいいのにと感じ、製作に乗り出したといいます。

「もともとは自分も、優先席が必要な人がいても席に座っている側の人間でした。席を譲りたいと思っていても、勇気が出なかったり、タイミングを逃してしまう場面もある。何とかならないかなと考え、席が必要な人の方から声かけができるようなサインがあればと思いつき、製品化することにしました」

 デザインにはすでに認知度の高かったマタニティマークを入れるため、厚生労働省に申請し認可を取得。その後、「マタニティマークだけに限定する必要はないのでは?」という意見が寄せられたことから、ヘルプマークのデザインを盛り込むことも検討し東京都に掛け合ったものの、こちらは「救助者と要救助者の判断がつかず誤解を招く」という理由から却下されてしまったと経緯を語ります。

 マタニティマークは営利目的での使用が禁止されているため、販売価格は製作費380円、送料120円の合計500円に設定。これまでに入った注文は累計約2万1000個で、現在は製作が追い付かず在庫切れの状況が続いているといいます。今後は材料費の高騰と「ひもよりもボールチェーンの方が使いやすい」という要望から、一部値上げも検討。寄付やクラウドファンディングにより、大学などでの配布企画も行っているといいます。

 椎野さんのもとには、「マタニティマークは周りに『譲って』と圧をかけてしまいそうで、つけるのを遠慮していました。このマークであれば気兼ねなくつけられそうです」「日頃から席を譲りたいと思っていてもどうしても声かける勇気が出ず、もどかしい気持ちがあったので、このマークを見つけられてよかったです!」など、購入者からの感謝の声が多数寄せられているそう。

 一連の反響について、椎野さんは「うれしい限りです。このマークは『双方向の優しさが見えるように』という思いで製作したので、必ずしも購入していただかなくとも、SNS上で優しさの輪が広がっていることが見えれば、それだけで意味のあることだと思っています」と話しています。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)