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電車でリュックは体の前に持ってくるべき? いつの間にかなくなったアナウンス…“前リュック”マナーの現状を鉄道会社に聞いた
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電車の利用に関する日本人のマナーの良さは、外国人に驚かれることも多いようです。整列乗車は当たり前、会話は控えめで車内は静か。混雑した車内で、体の前にリュックを抱える“前リュック”も、そんなマナーのひとつかもしれません。しかし、最近は“前リュック”を推奨するアナウンスが少なくなりました。その理由とは? 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の広報担当者さんに、話を伺いました。
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“前リュック”が難しい人への配慮も
そもそも“前リュック”マナーが広まり始めたのは、2010年頃のこと。混んだ電車内でリュックを背負ったままだと邪魔になるうえ、ほかの人に当たる危険もあるため、解決策として生まれたのが、体の前でリュックを抱えるマナーです。
一時は電車内で「大きなお荷物は前に抱えるか、網棚にお載せください」などのアナウンスが流れたり、鉄道会社のYouTubeチャンネルに推奨動画が投稿されたりするなど、リュック愛用者の最適解だと考えられていました。
ところが、いつの間にか“前リュック”を推奨するアナウンスが聞かれないように。その背景について、担当者さんは次のように話します。
「弊社をご利用されるお客様には、妊娠中の方など“前リュック”が難しい方もいらっしゃいます。お客様の状況に応じ、手荷物を膝や足元、網棚に置くなど、ご配慮をしていただければと考えております」
確かに、人によって事情はそれぞれあります。“前リュック”ができない人もいることを踏まえた結果、JR東日本では、あえて一律の呼びかけを控えるようになったようです。
それだけでなく、SNSでは「座っているとき、前に立たれると顔のすぐ近くにリュックが来て、邪魔になる」「“前リュック”を台にしてスマートフォンを見られると、肘が張り出して余計なスペースを食ったり、ほかの人に当たったりして迷惑」など、実は“前リュック”への反対意見も見受けられます。
ちなみに、全国約70社の民鉄が加盟する日本民営鉄道協会が行ったアンケート「2024年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング」(2024年10~11月実施、5314人回答)では、総合7位に「荷物の持ち方・置き方」がランクイン。また、「荷物の持ち方・置き方のうち、最も迷惑に感じる行為」として「背中に背負う」がトップの一方で、「体の前で抱える」が5位に入る結果となりました。
大事なのは持ち方ではなく、周囲への配慮
こうした考え方もあり、「“前リュック”が正しいマナー」とは言い切れなくなったのかもしれません。とはいえ、混雑した電車内で、リュックを背中に背負ったままでいることが推奨されるものではないようです。
「リュックを背負った状態でのご利用は、列車内混雑時などに周囲のお客様のお体に当たり、思わぬけがやトラブルにつながるおそれがあると考えております」と担当者さん。「すべてのお客様が安心して快適に車内をご利用いただけるよう、お客様同士、お互いにご配慮いただき、車内マナーの向上にご協力をお願いしたいと考えております」と話します。
JR東日本の公式サイトにある「JR東日本なるほどQ&A Guide・マナー」のページでは、荷物の扱いだけでなく「混雑時、出口付近に立っている人は、駅に着いたらいったん降りて人を通す」「車内での飲食は控える」など、さまざまな車内マナーが紹介されています。
大事なのは“前リュック”の是非ではなく、行動に込められた思いやり。形としてのマナーよりも、周囲への配慮をよく考えて、臨機応変に対応していきたいですね。
(Hint-Pot編集部)