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「ニューヨークを含め、おそらくほかの国にもない」 アメリカ暮らしで気づいた日本のすごさ 夏の電車で驚く配慮とは
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海外で暮らすと、当たり前だと思っていた日本のサービスの細やかさに驚かされる瞬間があります。妻の海外赴任に伴い、アメリカ・ニューヨークで駐在夫、いわゆる「駐夫(ちゅうおっと)」になった編集者のユキさん。この連載では「駐夫」としての現地での生活や、海外から見た日本の姿を紹介します。第26回は、ニューヨークの地下鉄での体験から改めて感じた、日本の電車の“心遣い”についてです。
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うだるような暑さの地下鉄ホーム
夏のニューヨークの地下鉄に乗ると、立ち込める熱気でよく倒れそうになります。電車に乗り込んですぐに感じる暑さ。その瞬間、この車両には冷房が入っていないのだなと悟りますが、走行中は車両間の移動ができないタイプがあるため、そのときはとりあえず、次の駅まではひたすら我慢するしかありません。電車が次の駅に停車すると、いったんホームに降りて、隣の車両へと乗り換えます。
さらに蒸し暑いのが、地下鉄のホームです。地下鉄構内は冷房が設置されていないところが多く、時折、送風用のファンさえ停まっていることがあります。風通しが悪く、汗だくになりながら電車を待つことになります。
しかも、定刻通りに電車が来ないことが珍しくありません。遅延を知らせるアナウンスもないので、イライラが募ることになります。
日本では電車が遅れることがあったとしても、必ずアナウンスが入ります。たとえ数分の遅れであったとしても、「電車が少し遅れています」といったお知らせが流れるうえ、ホームや車両内の電光掲示板にも、何分遅れといった表示が出るのです。いま思うと、すごいなと感じます。
こういったアナウンスがあるかないかで、待っているときの気の持ちようがずいぶんと違ってきます。こちらでは、10分程度の遅れでも遅れだと考えていないでしょう。
細かな気遣いを感じる弱冷房車
そして、日本の電車で何より驚くのが、弱冷房車の存在です。
ニューヨークを含め、おそらくほかの国にも弱冷房車という車両はないでしょう。冷房が効いていればまだまし、それ以上の暑い、寒いは自分の着る服で調整してくれというのが当然だと考えられていると思います。
夏の冷房が効きすぎてつらいといった人の声をすくい上げて、配慮する。こういった細かい心遣いができることが、海外で実際に生活してみて、日本のすごさを一番感じるところです。
これは電車に限らず、ほかの商品やサービスなど、あらゆる種類のものにいえることでしょう。このように相手のことを慮れる気遣いは、日本人が誇って良いものだと思います。
もちろん、それがときとして過剰なサービスにつながり、日本の労働者の負担になっている側面はあるとは思いますが。
さて、走行中に車両を行き来できないことで、別の問題も起こります。こちらでは、電車内で奇声を上げるなど明らかに不審な人物に遭遇する機会がけっこうあるのですが、そういったときに逃げ場がなくなるのです。
そうした場合、なるべく車両の離れた場所に移動し、次のホームで車両を変えることにしていますが、近寄られて、目の前でわけのわからない言葉(英語が通じないということではない)を叫ばれて、怖い思いをしたことがあります。
日本のように、安全に電車に乗れるのは、貴重なことなのかもしれません。
(ユキ)

ユキ(ゆき)
都内の出版社で編集者として働いていたが、2022年に妻の海外赴任に帯同し、渡米。駐在員の夫、「駐夫」となる。現在はニューヨークに在住し、編集者、学生、主夫と三足のわらじを履いた生活を送っている。お酒をこよなく愛しており、バーめぐりが趣味。目下の悩みは、良いサウナが見つからないこと。マンハッタン中を探してみたものの、日本の水準を満たすところがなく、一時帰国の際にサウナへ行くのを楽しみにしている。
