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「自分たちも会場から出られないって気づいた」 “オールナイト万博”で称賛を集めたポルトガルパビリオン 神対応の舞台裏

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

ポルトガルパビリオンで働くセルビア人のマーシャさん【写真:Hint-Pot編集部】
ポルトガルパビリオンで働くセルビア人のマーシャさん【写真:Hint-Pot編集部】

 2025年大阪・関西万博の会期も残すところあと1か月余り。連日、多くの来場者で賑わう会場では、各パビリオンの外国人スタッフたちが訪問者を温かく迎えています。日本で暮らし、日本人と日々接するなかで、彼らはどのような発見をしているのでしょうか。「海、青の対話」をテーマに、持続可能な未来における海の役割を強調する没入型の体験を提供しているポルトガルパビリオン。8月13日の夜、大阪メトロの停電によって予期せぬ“オールナイト万博”が話題となった際、同館の神対応にも注目が集まりました。その裏側をスタッフのマーシャさんが振り返ってくれました。

 ◇ ◇ ◇

15歳から独学で日本語を勉強 ポルトガルパビリオンの職を獲得

 セルビア出身のマーシャさんは、15歳から独学で日本語を学び始め、大学でも日本語を勉強しました。2019年に初めて日本を訪れ、昨年2度目となる訪日では就職活動に挑戦。しかし、就職はほぼ決まりかけていたものの、ビザの問題で実現には至らなかったといいます。

 そんな折、友人が万博の求人を見つけて教えてくれたのがきっかけで、現在はポルトガルパビリオンでスーパーバイザーとして働いています。

 夏休みに入り、連日15万人以上の来場者が訪れるなか、8月13日に夢洲駅へとつながる大阪メトロ中央線が不通となり、多くの人が万博会場に取り残されるアクシデントが発生しました。マーシャさんもその夜、会場に残っていたスタッフの1人だったそうです。

予期せぬアクシデントでの対応はスタッフから自主的に

 通常であれば閉館とともに、静寂に包まれる万博会場。ところが、この夜ばかりは違いました。交通機関の復旧を待つ来場者たちが会場に戻り、留まることになったのです。マーシャさんはこう振り返ります。

「中央線が止まってしまってびっくりした。ときどき止まることはあっても、いつもすぐに復旧していたの。でも、今回は動かないってわかって、自分たちも会場から出られないって気づいた」

 当初、マーシャさんたちスタッフ側も混乱はあったようです。ただ、残っているメンバーとともにすぐに機転を利かせ、対応を始めました。

「何人か残っていたスタッフと話して、『ドリンクでも売ってみようか』ってなって。責任者に連絡を取ったら『問題ないよ』と言われたので、ビールを販売することにした」

 予期せぬ状況のなか、マーシャさんたちは自発的に来場者へのサービスを決断しました。このような対応が可能だったのは、ポルトガルパビリオンの柔軟な体制があったからだといいます。

「ポルトガルパビリオンはトップダウンではなくて、スタッフたちから意見を言って改善したり、変えたりすることをとても自由にさせてくれるから、今回のような対応ができたと思う」

 この対応によって、救われた来場者は少なくなく、ポルトガルパビリオンの公式インスタグラム(portugalexpo2025)の翌日の投稿には、「万博っていいなぁって心から思いました」「感謝しかないです。助け船ありがとうございました」「ありがとうポルトガル」などの声が寄せられています。

(Hint-Pot編集部)