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売り物にならない魚が“主役” 驚きの活用法…「リアル図鑑」60種類 「いつまでも眺めていられる」
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解体した段ボールの上に並べられた色とりどりの魚たち。神奈川・三浦市の三崎港で毎週日曜早朝に開かれる「ダンボール水族館」が、SNS上で話題を呼んでいます。売り物にならない魚を展示し、地元の海の豊かさを伝えるこの取り組み。始めたきっかけは何だったのでしょうか。展示を担当する観音崎自然博物館の副館長・山田和彦さんに詳しい話を聞きました。
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売り物にならない魚を展示し、地元の海の豊かさを伝える取り組みが話題に
「学芸員さんが魚の名前を書いてくれるリアル図鑑。子供むけの企画のようでありながら、こういうのはオッサンになった今でも楽しい。本当にワクワクしながらいつまでも眺めていられる」
9月末の日曜日、三崎港を訪れた人がSNS上に投稿した写真にはエイやアナゴ、ミノカサゴなど、三浦半島近海で取れたさまざまな種類の魚たちが、段ボールの上に並べられた様子が収められています。段ボールにはそれぞれの魚の種類や「あぶない」などと書かれた注意書きも。手作り感満載の水族館に、ネット上では「すてきなイベント!」「おいしそうなのが混じってる」「並べ方も合わせててかわいい!!」「売り物になる魚も普通に混じってますね!」「いろんな漁港でやってほしい」「漁師さんも学芸員さんも素晴らしい」など、さまざまな反応が寄せられています。
「ダンボール水族館」と名づけられたユニークなこの試み。三崎港で毎週日曜早朝に開かれる「三崎港朝市」の会場で見ることができます。展示されているのは、地元の定置網にかかった魚のうち、魚種や状態から売り物にならないとされたものたち。現在は地元にある観音崎自然博物館副館長の山田さんが担当していますが、もともとは地元の魚料理店が始めたといいます。
「発案者は僕じゃなく、三崎で『くろば亭』という魚料理店を営む2代目店主の山田拓哉さんという方が考えた企画なんです。三崎はマグロが有名な町ですが、マグロ以外にもいろんな魚がいるんだよというのを、三崎に来た人に知ってもらいたいということで始まったんです」(山田和彦さん)
10年以上前、拓也さんは魚市場で売り物にならない魚を譲り受け、お店の前で展示を始めたそう。しかし、魚屋とはいえ専門の研究者ではないため、名前の分からない魚を山田さんに尋ねるように。そのころ、山田さんも朝市会場近くにある三崎魚市場で水揚げされた魚の調査をしていたため、山田さんが直接名前を書き込む現在の形になったといいます。
展示は朝6時半頃から8時頃まで。時化や不漁などの理由で水揚げがないとき以外は毎週開催されています。山田さんは博物館の出勤時間があるため、いつも名前を書き終わると会場を後にしており、魚たちは置きっぱなしの状態で、訪れた人が自由に観察できるようになっています。
並ぶのは定置網にかかった魚たちで、季節によって魚の種類がどんどん変わるのが特徴だそう。「イワシとかアジの仲間はもちろん、サメやエイなんかもあるし、アナゴみたいなのも。ちょうど今の季節、夏から秋にかけては海の中が温かい状態なので、南からやってくる魚もちらほら並びます。この前の日曜日は60種類ぐらい並んでいましたね」。相模湾や三崎半島近海で記録されている魚の種類は2000種類にも及びます。そのうち、一般の魚屋に並ぶのは100分の1ほど。ダンボール水族館では、普段食卓では見ることのできない多種多様な魚たちに出会えるといいます。
段ボールの上に並べられた魚たち。一見地味な展示ですが、そこには「三崎にはこんなにいろんな魚がいるんだよ」という地元の海への愛情が詰まっていました。マグロだけじゃない、三崎の海の豊かさ。一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)
