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カンピロバクター感染の落とし穴 鶏肉だけではない感染源…「冷凍すれば大丈夫」は誤解? 家庭内の二次感染を防ぐには

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

カンピロバクターは家庭内にも感染のリスクが(写真はイメージ)【写真:写真AC】
カンピロバクターは家庭内にも感染のリスクが(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 細菌性の食中毒の原因として、日本で最も多いといわれるカンピロバクター。鶏肉の生食や加熱不足が主な原因として知られていますが、実は鶏肉以外にも感染源となるものがあるとされています。また「新鮮なら生で食べても大丈夫」「少しだけなら問題ない」といった誤解が感染リスクを高めているケースも少なくありません。さらに、感染者が家族にいる場合の二次感染対策も重要です。カンピロバクター感染の正しい知識と予防法について、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの安江千尋院長に聞きました。

 ◇ ◇ ◇

鶏肉だけじゃない 牛肉・豚肉の内臓やペットからも感染

 カンピロバクターは鶏肉に多く存在しますが、実はほかの動物の腸管にも生息します。牛肉や豚肉でも、加熱が不十分だと感染の原因になり得ます。とくにレバーやホルモンなどの内臓肉は、生焼けで食べないように注意が必要です。焼肉店などで内臓系メニューを注文する際は、中心部までしっかり火が通っているか確認しましょう。

 肉類以外では、生乳(加熱殺菌されていない牛乳)や井戸水・湧き水などの飲用も感染源として知られています。山間部のキャンプで沢の水をそのまま飲んだことによる感染や、井戸水を飲用にしていた家庭内での集団発生が過去に報告されています。

 アウトドアでは「自然の水だから安全」と思い込みがちですが、カンピロバクターをはじめとする病原菌が含まれている可能性があります。飲用には必ず煮沸した水やペットボトルの水を使用しましょう。

 また意外な感染源として、犬や猫などのペットの糞便からも検出されることがあり、ペットを介した感染例も報告されています。ペットの排泄物を処理した後は、必ず石けんでしっかり手を洗うことが大切です。

「新鮮なら生で大丈夫」は危険な誤解 少量でも感染のリスクあり

 カンピロバクターに関するよくある誤解のひとつは、「新鮮なら生で食べても大丈夫」という考えです。カンピロバクターは肉の鮮度とは無関係に存在するため、新鮮な鶏肉でも生食は危険です。鮮度が良いからといって菌がいないわけではありません。

 また「少しだけなら大丈夫」というのも誤りで、ごく少量(数百個程度)の菌でも感染する可能性があります。ほかの食中毒菌と比べても、カンピロバクターは非常に少ない菌量で発症するのが特徴です。「ひとくちだけ」のつもりでも、十分に感染リスクがあることを知っておきましょう。

 さらに「冷凍すれば菌が死ぬ」と思われることもありますが、カンピロバクターは冷凍によって数は減るものの完全には死滅せず、解凍後に生食すれば感染リスクは残ります。冷凍保存は鮮度を保つ方法であって、殺菌方法ではないのです。

 予防には「中心部までしっかり加熱(75度以上で1分以上)」が不可欠です。調理器具やまな板、包丁は肉と他の食材で使い分けるか、使用後は熱湯や洗剤でよく洗うことも大切です。肉の生食や生焼けは「少しなら」「新鮮なら」と思わず、常にリスクがあることを知っておくことが、感染を防ぐ一番の近道です。

家庭内の二次感染を防ぐには手洗いと衛生管理が基本

 カンピロバクターは人から人への感染は頻繁ではありませんが、下痢便中に大量の菌が排出されるため、家庭内では注意が必要です。とくに小さなお子さんや高齢者は免疫力が低いため、感染しやすくなります。

 予防の基本は「手洗い」と「衛生管理」です。トイレの後やオムツ交換後、調理や食事の前には必ず石けんでしっかり手を洗いましょう。また、タオルやコップなどの共有は避けることが望ましいです。感染者が使用したタオルを介して、他の家族に菌が広がる可能性があります。

 便で汚れた衣類や寝具は分けて洗濯し、トイレやドアノブなどはアルコールや次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤を薄めたもの)で拭き取ると効果的です。感染者が調理を行うのは避け、症状が完全に治るまでは他の家族への配慮が必要です。こうした基本的な対策を徹底することで、家庭内での二次感染を防ぐことができるでしょう。

◇安江千尋(やすえ・ちひろ)
防衛医科大学校医学科卒業。がん研有明病院下部消化管内科副医長を経て、現在は天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。わかりやすく丁寧な診療を心がけ、地域医療に従事している。

(Hint-Pot編集部)