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「フライングで紅葉狩り」 京都・祇園の古美術店店主が語る 紅葉の季節に映える京焼の魅力

公開日:  /  更新日:

著者:豊嶋 操

素敵な器たちが並ぶ古美術店「観山堂」【写真提供:観山堂】
素敵な器たちが並ぶ古美術店「観山堂」【写真提供:観山堂】

 紅葉が山裾から街へと下りてきて、美しい季節を迎えます。そんな秋の食卓には、季節の彩りを映す器を取り入れてみたくなるもの。京都の焼き物「京焼」には、どんな魅力があるのでしょうか? 全国通訳案内士として訪日外国人を各地に案内するうちに陶磁器に魅了された豊嶋操さんが、京都・祇園で古美術店「観山堂」を営む八木美由紀さんに話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

2大名工により花開いた京焼の世界

そろそろ街路樹の葉も色づき始めて、「京都が呼んでいる」という時期になりました。

――毎回、京都・五条の茶わん坂を歩くと、いつも店頭に並んだ素敵な焼き物の数々に目を奪われます。「京焼」や「清水焼」と書いてあるのを目にしますが、具体的にはどういったものですか?

「まず京焼は、文字通り『「京都で焼かれた陶磁器』」の総称なんですよ。一方、清水焼は京焼のうちの1種で、他にも粟田口焼(あわたぐちやき)、御室焼(おむろやき)、岩倉焼などたくさん沢山あって、それぞれ窯のある地名に由来します。実は京焼の歴史はとても古く、聖武天皇の奈良時代~平安初期までさかのぼりますが、実際にその名が広まったのは京焼界の2大スターが登場した江戸時代以降です」

――2大スターというと……そのうちのひとりは鑑定番組などで耳にする野々村仁清ですか?

「まさに! 美術館で目にする機会も多いですよね。江戸時代前期~中期に野々村仁清と尾形乾山の作品が一世を風靡しました。

仁清は有田の錦手(※1)という技法を学んだと伝えられ、京都で最初に色絵(※2)を用いて繊細な作品を生み出した人物です。アイボリーやベージュがかった色味の素地に緻密で大胆な柄が描かれていて、とても洗練されています。

また作風は違いますが、その弟子の尾形乾山も兄・光琳とともに名作を残しています。実際、仁清写し(※3)や乾山写しの作品はとても多いですね。たくさん作られているというのはやっぱり好まれている柄というわけで、デザイン的にもパッと目を引きやすいと思います。よく練られているけれど、大胆な構図という感じでしょうか。他方で京焼には素朴な陶器も各種あるので京焼全体としての特徴は『幅広い』ということになりますね」

※1 錦手 赤・黄・緑などで上絵をつけた製品
※2 色絵 陶磁器に彩色する技法で、多彩な色使いが特徴。錦手も色絵のひとつ
※3 写し 形や図柄を模倣した作品

――確かに、素朴な陶器からスタイリッシュな磁器まで、ある京焼全体の作風は多彩ですよね。どうしてこれだけ幅広い特徴があるのでしょうか?

「理由はいくつかあるのですが、安土桃山時代~江戸時代にかけて茶の湯文化が花開き、公家や大名といった上流階級の人々が競って独創性のある焼き物を発注するようになったこと、京都には適した土が乏しかので他県からの土を窯元や陶工がそれぞれに工夫して使っていたこと、などです。

また明治時代以降、京焼をバックアップしていた上流階級の人々が東京に移り、開国後にヨーロッパから影響を受けるなどさらに進化していきました。なので、明治~大正期の作品も多彩です」