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「大変がっかりした」 激マズ→世界有数の美食都市に イギリスで日本人が困る、意外すぎる瞬間とは

公開日:  /  更新日:

著者:斎藤 理子

飲食店激戦区のひとつ、ロンドン・ウエストエンド【写真:Aflo】
飲食店激戦区のひとつ、ロンドン・ウエストエンド【写真:Aflo】

「イギリス料理はまずい」――そんなイメージは、いまや過去のもの。イギリス・ロンドンを中心に、レストランシーンは目覚ましい進化を遂げ、世界有数の美食都市として注目を集めています。しかしその一方で、イギリスならではの食文化や、意外な落とし穴もまだまだ“健在”。フードジャーナリスト・斎藤理子さんが現地で体験したリアルな食事情とともに、イギリスの知られざる食の今を紐解きます。

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イギリスのレストランが発達しなかった歴史的背景

「イギリス料理はまずい」という不名誉な評判は、長年にわたり、非常に根強くはびこっていますよね。確かに1980年くらいまでは、行く先々のレストランでことごとく満足できる味に出合えず、当時は「やはりイギリスはおいしくないんだなあ」と実感したものです。

 イギリスでレストランというものがあまり発達しなかった背景には、いくつかの理由があります。そもそもイギリス人には、伝統的に外食の習慣があまりなく(外食できる余裕があるはずの上流階級は基本、家に料理人がいます)、また紳士淑女たるもの、出された料理の味に対してあれこれ言うのはお下品なことで、好ましくないとされていました。加えて、料理人の地位が非常に低かったなどの理由が挙げられます。

「イギリス料理はまずい」というのは、もはやネタのように定着してしまっていたのですが、1990年代に入ると、レストランシーンが劇的な変化を遂げます。イギリスの好景気もあり、海外で修行を重ねた若いシェフたちが続々と帰国。次々に自分の店を立ち上げる、大きなムーブメントが起こりました。

 伝統的なイギリス料理をベースにしながら、ソースはより軽く、自由自在に世界の食材を取り入れた、いわゆる「モダン・ブリティッシュ」が誕生します。

ミシュラン星付きレストランの数は世界3位に

 この動きを後押ししたのが、金融バブルでお金持ちになった、若いジェットセッターたちでした。世界中でおいしいもの食べてきた彼らが、母国でもおいしいものを食べたいと願うのは自然の流れ。需要と供給が一致して、イギリスのレストランシーンは、まさに革命的な変化を遂げたのでした。

 以来、イギリスのレストランはどんどん進化。いまやロンドンのミシュラン星付きレストランの数は、1位の東京、2位のパリに次いで3位にランクインするまでになっています(年によって変動あり)。

 いやあ、本当に隔世の感。いまやイギリスの友人たちは、かつて自分たちの国が「激マズ」といわれていたことを忘れたかのように「あの店がおいしい」だとか「こっちの店のほうがおすすめ」などと、頻繁にグルメ談義を繰り広げています。

 でも、私は知っている。あの暗黒時代を。まあ、昔に比べたら、別の国のようにおいしくなったのは事実ですが。