Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

「日本人はわざと自分に自由を与えない」 ジョージア大使が見た日本人の美学 秩序と引き換えに選んだ“窮屈さ”の価値

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

「窮屈さ」が生み出す、世界に類を見ない美しさ

ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使にとってSNS投稿はもはや日課【写真:黒澤崇】
ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使にとってSNS投稿はもはや日課【写真:黒澤崇】

 ジョージアから来客があると、誰もが「静かできれいで、なんて便利な国なんだ」と最初の印象を持つといいます。しかし、長く暮らすティムラズさんの胸中には、それとは別の感情も同居していました。

「言葉では言い表せない窮屈感というか、社会の中からくる圧力のようなもの。それはそれで、あるんだなといつも感じます。そこで私がひとつ好きな言葉なのが、『自由のなさが自由』という言葉です。日本人はわざと自分に自由を与えない、みんなちょっと苦労して、それが美化されている部分があるなと」

 ティムラズさんは、日本人が「他人に迷惑をかけない」「プレッシャーや責任感を持つ」という姿勢を自らに課し、あえて不自由さを受け入れている姿に、日本特有のあり方を感じているといいます。

「ほかの国では、多少ルールがあいまいでも、その場の判断で柔軟に対応できることがあります。日本人は自由の使い方が上手じゃないですよね。表面から見る日本と、中から見る日本とは、さまざまな違いがあるなと感じます」

マナーを守ることで得られる「市民権」

日本人の「自由」の使い方に対する思いを語ったティムラズさん【写真:黒澤崇】
日本人の「自由」の使い方に対する思いを語ったティムラズさん【写真:黒澤崇】

 外交官という職務の中でも、ティムラズさんが「苦労する」と明かすのが、この「不自由さ」の象徴とも言える日本のビジネスマナーや商習慣です。他国にない細やかなルールが多いため、日本のスタイルに合わせていくには、大使館としても大きな努力が必要だといいます。

「私自身も、日本のさまざまなルールをしっかり押さえることには苦労します。だけど、しっかりとそれをやっていくと、意外とコミュニケーションがスムーズにいったり、信頼が集まったりする。日本の社会の中での『市民権』のようなものが生まれてくるんです」

 大使は自身のSNSを通じて、ユーモアと愛にあふれた日本の日常を発信し続けています。その投稿の半分以上が日本に関する内容なのは、「相手のことを理解しないと自分のことも理解してもらえない」という相互理解を重要視する心がけからです。

 日本人があえて自由を制限し、プレッシャーを引き受けることで維持されているこの社会。その特殊なルールをあえて遵守することは、異分子である大使がこの国で信頼を築き、相互理解を深めるための、極めて合理的で誠実な選択なのです。

◇ティムラズ・レジャバ(Teimuraz Lezhava)
1988年、ジョージアの首都トビリシ生まれ。1992年に来日し、日本の公立小・中学校で学ぶ。早稲田大学国際教養学部を卒業後、2012年にキッコーマン株式会社へ入社。2019年に駐日ジョージア臨時代理大使に就任し、2021年より特命全権大使を務める。日本社会への深い理解と愛情、そしてユーモアを交えたSNSでの発信が大きな反響を呼び、X(旧ツイッター)のフォロワー数は37.1万人を超える(2026年4月現在)。著書に『大使が語るジョージア 観光・歴史・文化・グルメ』(星海社新書)などがある。

(Hint-Pot編集部)