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予約した新幹線の指定席に親子が…「席を替わって」と言われたら? 弁護士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:坂本 尚志

居座り続けた人の「ごね得」になる?

 今回のケースでは、母親側に「幼い子どもと離れて座るのが心配」という事情があります。しかし、どのような事情があっても、指定席を予約した人が席の交換に応じなければならない法的義務はありません。

 席を替わっても良いと思えば応じることはできますが、あくまで双方の合意が必要です。「子ども連れだから」「家族が離れてしまったから」といった理由だけで、一方的にほかの人の指定席を使い続けることは認められません。

 では、本人や車掌から移動するよう求められても、無視して座り続ければ「ごね得」になるのでしょうか。

 その場でただちに犯罪が成立するとは限りませんが、居座ったことで、その席を利用する権利が生じるわけではありません。鉄道会社は指定券の内容を確認したうえで、母親に本来の座席へ移るよう求めることになります。呼びかけを無視するなどして解決しない場合には、ほかの係員を呼ぶ、駅で対応するなど、鉄道会社側が状況に応じた措置を取ることが考えられます。

 したがって、法的には「先に座り、移動を拒み続けた人がその席を使える」という結論にはなりません。ただし、実際の車内では、発車時刻やほかの乗客への影響などを考慮し、予約した側に一時的な移動を依頼するなど、運行を優先した対応が取られる可能性はあります。その結果だけを見ると「ごね得」に映ることはあるでしょう。

席を移った場合、補償は受けられる?

 では、トラブルを避けるため、相談者が離れた真ん中の席へ移った場合、補償を受けることはできるのでしょうか。

 相談者が母親の依頼に納得し、自ら席の交換に応じたのであれば、原則として鉄道会社に返金や補償を求めることは難しいと考えられます。同じ普通車指定席同士であれば通常は料金差がなく、「通路側から真ん中になって不便だった」というだけでは、金銭的な損害を算定することも容易ではありません。

 また、母親に対して損害賠償を求める場合も、実際にどのような損害が発生したのかを示す必要があります。座り心地が悪かった、席を立ちにくかったといった不便だけで、金銭の支払いを求めることは現実的には難しいでしょう。

 ただし、本人が交換を了承していないにもかかわらず、鉄道会社側の判断によって指定された席を利用できず、別の等級の座席や立席で移動することになった場合は事情が異なります。その場合には、自分で判断して席を譲る前に、指定席を利用できなかった事実や鉄道会社の対応を確認し、返金などの扱いについて車掌や駅係員に申し出ることが重要です。

 払い戻しは、列車の運休や遅延など、旅客営業規則で定められた条件に基づいて行われます。乗客同士の席の交換について一律に補償される制度があるわけではないため、個別の事情に応じた確認が必要です。

 指定席をめぐるトラブルでは、相手を無理やり立たせたり、荷物を勝手に動かしたりせず、指定券を示したうえで車掌に対応を求めましょう。自ら席を譲ってしまうと、あとから補償を求めることが難しくなる可能性があります。

※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。

(Hint-Pot編集部)

坂本 尚志(さかもと・たかし)

弁護士。清陵法律事務所所長。プロボクサー。東京大学法学部卒業。詐欺・消費者問題に注力。https://seiryo-law.com/