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「他人の荷物をどかす」のは罪にならない? 新幹線での席取りトラブル 弁護士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:坂本 尚志

帰省ラッシュの混雑した新幹線の自由席で起きた思わぬトラブル(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
帰省ラッシュの混雑した新幹線の自由席で起きた思わぬトラブル(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 年末年始は、新幹線や特急列車の自由席が大変混雑する時期です。ようやく座れたと思っても、トイレや荷物の整理などで、やむを得ず席を離れる場面もあるでしょう。その際に、座席にハンカチや荷物を置いて席を立ったにもかかわらず、戻ってきたら、別の人が座っていた――。そんな経験はありませんか? 年末年始に起こりやすい、自由席をめぐるトラブルについて、弁護士の坂本尚志先生に聞きました。

 ◇ ◇ ◇

「誰も座っていなかったので」と横取りされた

 年末年始、新幹線の自由席で帰省しました。始発駅だったため、ようやく一つだけ空いている席を見つけ、座ることができました。

 次の駅には立ち客も出るほどの混雑ぶり。しかし、目的地まであと半分というところでトイレに行きたくなり、荷物は荷物棚に乗せたまま、席にハンカチを置いて立ち上がりました。すぐ戻るつもりでしたし、「これで席は確保できている」と思っていたんです。

 ところが、数分後に戻ってくると、その席には別の人が座っており、置いていたハンカチは、床に落ちていました。

「そこ、取っていたんですが……」

 そう伝えると、「誰も座っていなかったので」と言われ、少し気まずい雰囲気になりました。

 確かに、自由席です。でも、ハンカチを置いていたのに、これは自分が悪かったのでしょうか。席を取られてしまったことに、納得がいかず、「これって、何か問題になる行為なのだろうか」と疑問が残りました。

自由席は「座っている人」が優先

 こうしたケースについて、弁護士の坂本氏は次のように説明します。

「新幹線の自由席は、指定席とは異なり、座席の利用権が個別に保障されているわけではありません。原則として、実際に座っている人がその席を利用できます」

 ポイントになるのは、人が座っているかどうかです。

「ハンカチや荷物を置いただけでは、席を占有しているとは評価されにくいのが実情です。一時的に席を離れた場合、その間に他の人が座れば、その人の利用が優先されることになります」

 一方で、「他人の荷物に触って良いのか」という疑問を持つ人も多いでしょう。

「他人の荷物に触れて動かしただけで、ただちに犯罪になるわけではありません。今回のように、席に置かれていたハンカチを脇にどかし、その場に残したり、床に落としたりしただけであれば、刑事責任が問われる可能性は高くありません」

 ただし、状況によっては評価が変わることもあります。

「どかす際に壊したり、別の場所に持ち去ったりした場合や、大声で怒鳴る、押しのけるといった威圧的な態度を伴う場合には、別の問題が生じる可能性があります」

 坂本弁護士によると、混雑時に荷物で席を確保し続ける行為も、トラブルの原因になりやすいそうです。

「自由席では、荷物だけで席を確保しようとすると、周囲の利用を妨げると受け取られることがあります。状況によっては、乗務員から注意を受ける可能性もあります」

 どうしても席を離れる必要がある場合は、同行者に座ってもらう、乗務員に相談するなど、ひと手間かけることが、無用なトラブルを防ぐことにつながりそうです。

※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。

(Hint-Pot編集部)

坂本 尚志(さかもと・たかし)

弁護士。清陵法律事務所所長。プロボクサー。東京大学法学部卒業。詐欺・消費者問題に注力。https://seiryo-law.com/