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中高一貫校の文化祭 在校生の親には“生活レベル”判定会!? オンライン開催で顕著に

公開日:  /  更新日:

著者:杠 ともえ

バザー品のラッピングがプロ仕様! お母さんが“お教室”の先生という事実

 その後、息子は志望していた中高一貫校に無事合格。在校生の親になると、文化祭の意味合いがまったく異なりました。

 まず戸惑うのは、学校に寄付するバザー品。「新品であれば、本当に不用品で良いの?」と、中学1年生の親は悩みます。ちなみに私は、購入したティーバッグ詰め合わせを寄付しました。同級生のお母さんも「箱入りのスポーツタオルを買ったわ」と、同じ行動をしていたようです。

 文化祭では朝イチでバザーの行列に並びました。どういう品が寄付されているのか偵察するためです。ハイヒールから日用雑貨まで並ぶ中、驚いたのは数や種類の多さだけではありません。ノートとシャープペンシル、筆箱をセットにしたものなど、きれいにラッピングされていた寄付品も。

 聞けば、PTA役員がシールやリボンで一品ごとに包装を施してくれたのだそう。その仕上がりはとても素人と思えません。息子が中学2年の時には、お母さんたちのラッピング技術が一朝一夕で身に着けた技ではないことを知りました。

 他にも驚いたのは、「今年はハンドメイド小物を販売するので先生を募集します」というPTAのお手紙に応募者が殺到したこと。ラッピングの他にも、ハーバリウムやクリスタルデコレーションなど“お教室”の先生、つまり“プロ”のお母さんが多数いたのです。

 またPTAのお仕事には、各クラス2名のお母さんが焼き菓子を作って文化祭で販売するというものが。クラス委員さんの説明中、「お菓子に校章の焼き印までは求めません」という言葉を耳にして私は青ざめました。

「もし私に役が割り振られたら、洋菓子店で買った商品を100均ラッピングに移し替えて切り抜けよう……」

 本気でそう考えたのを覚えています。結局、焼き菓子担当は、「スイーツ作りが趣味です!」と名乗り出た複数のお母さんのおかげで、私に回ってくることはありませんでしたが。

文化祭のオンライン化 各家庭の生活レベルがより鮮明に

 そして2020年、世界を襲った新型コロナウイルスで子どもたちの学校生活も一変しました。リモート化が一気に進み、息子の学校では行事が軒並み中止になる中で、文化祭のみインターネット上に動画をアップして観賞するというオンライン開催に。

 実際の動画にはクラスや部活、有志などによる団体参加に加えて、個人が撮影した企画も見られました。アイドルの曲に合わせて歌い踊る動画を披露した生徒もいて、お母さんからは「お勉強もこれくらい頑張ってほしいのですが……(泣)」と、LINEで正直な感想が送られてきたことも。

 親子で楽器演奏の動画を撮影したご家庭もありました。紅茶を飲みながら動画を視聴していると、自分がまるでサロンにいるかのような錯覚にとらわれます。しかし、曲が終わり現実に引き戻されると、そこは見慣れた我が家の食卓です。

 リモートワークが普及した結果、在宅でのウェブ会議で社員の生活感が丸見えになった、という話をよく耳にします。学校も同様に、文化祭のオンライン化をきっかけに他のご家庭の生活レベルが見えてしまうという新たな側面が生じたのです。

 受験前に各校を比較する時は、校風や教育方針など学校の全体像を眺めていると思います。木に例えると、高さや枝ぶりの見事さといった外観だけに視線が向くことでしょう。ところが入学して根本から木を仰ぐと、枝葉の育ち具合が細かく見えてきます。生徒に対する先生の声かけ、各家庭における子どもとの向き合い方……どれをとっても千差万別で定型はありません。

 文化祭は“大人の関わり方”によって各校で差が出るという話をしました。文化祭ほど大人たち、特に親の協力が必要になる学校行事はありません。だからこそ、各家庭の生活レベルが見えるのです。とはいえ、バザー品に関しては慣れが生じるのか、高学年になるほど品質が低下しがちなのは否めませんが……。

(杠 ともえ)

杠 ともえ(あかなし・ともえ)

大学卒業後、メーカーで半導体の営業、アメリカ留学、番組制作AD、編集記者、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、保育士などを経験。自身は小学校から大学まで、すべて地方の公立校卒。一人息子が都内の私立中高一貫・男子校に在学中。女子高出身で、さらに兄弟がいない環境で育ったため、摩訶不思議な男子の生態に翻弄される日々を過ごす。