からだ・美容
「ヤクルト1000」人気で注目の“脳腸相関”を医師が解説 腸内環境はなぜ睡眠に影響?
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教えてくれた人:近藤 千種
空前の大ヒットを記録し、入手困難な状況が続いている「ヤクルト1000」(宅配専用)と「Y1000」(店頭向け)。「ストレス緩和」と「睡眠の質向上」を掲げる機能性表示食品ですが、その作用を理解するにはまず“腸と脳の関係”を知っておくのが良いようです。ちくさ病院副院長・抗加齢医学会認定専門医の近藤千種医師にお話を伺いました。
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脳と腸は密接に関係 腸内環境の悪化は不安やうつにつながることも
「第二の脳(セカンドブレイン)」とも呼ばれる腸は、たくさんの神経が集まった部位です。また、腸に生息する約1000種100兆個の細菌は腸内細菌叢(腸内フローラ)を構築し、栄養代謝や防御機構、免疫機構の発達に大きく関与しています。ただし、腸内細菌の種類は個人によって違うため極めて多様。さらに、食事や環境によっても異なるとされています。
脳と腸は離れたところにあります。しかし、自律神経やホルモン、サイトカインといった物質で密接に関連しており、脳が腸に、また腸の状態が脳に影響を及ぼすことが近年の研究で分かってきました。この考え方を「脳腸相関」といいます。
2021年2月、国際的な科学誌「Nature」に腸内細菌とさまざまな精神疾患との関係についての記事が掲載されました。また、腸内の細菌状態が脳の炎症を引き起こす可能性の指摘や、腸内細菌叢の組成の変化が認知症と関連があるというデータの報告もあります。
腸内環境が悪化すると、その情報は神経系を介して大脳に伝わり、腹痛・腹部不快感だけでなく、不安やうつなどの情動変化も引き起こします。そして、これらの情動変化がホルモンや自律神経を介して腸へ伝達され、さらに腸の運動異常が起こります。このように、脳と腸は一方通行の関係ではなく、互いに影響し合っているのです。
「幸せ物質」ことセロトニンは9割が腸で生成される
私たちが脳で幸せを感じるもとになる物質、いわゆる「幸せ物質」の一つがセロトニンです。その9割は腸で作られているため、腸内環境が悪化すると不安やイライラを感じやすくなるといわれています。脳内のセロトニン量が少なくなり、ストレスへの耐性が低下するからです。
また、発達期のセロトニンが自閉症発症のメカニズムに関与している可能性も指摘されており、子どもの脳の発達にも腸内細菌の働きが大変重要であると考えられます。