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元SKE矢方美紀さん「この先恋愛もできないんじゃ…」 乳がん治療で抱えた不安と葛藤
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10月はピンクリボン月間、乳がんについて正しく知るための啓蒙月間です。今や乳がんは日本人女性の9人に1人がなるといわれていますが、早期の発見や治療によって10年後の生存率は90%以上(公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2022」)です。「Hint-Pot」では、ピンクリボン活動にちなみ3回の連載記事をお届けします。4年前の25歳の時に乳がんで左乳房全摘出とリンパ節切除の手術を受けた元SKE48の矢方美紀さんと、今年38歳で乳がんが判明し右胸全摘手術を受けたライターの島田みゆさんが対談。第1回は女性のライフステージとして重要な時期でもあるAYA世代(adolescents and young adults:15歳から39歳の思春期・若年成人)での乳がん罹患と、女性性についてです。
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胸を全摘することへの葛藤や悩み
――おふたりとも乳がん治療で胸の全摘をしてらっしゃいますが、「胸を取る、残す」という選択への葛藤や悩みなどはいかがでしたか?
矢方美紀(以下、矢方):私は乳がんに罹患したのが25歳で、まずその年齢で乳がんになったこと自体に驚きました。最初の検査ではステージ1の初期で「全摘ではなくて部分切除でも」と言われていたので安心していたのですが、それ以降の検査でリンパ節転移があることが分かりました。10年間の治療を終えた時点でもまだ35歳という年齢のことなどを考えると全摘の方がいいとなって……。
自分の体の一部がなくなることも衝撃的でしたし、「胸がなくなるのは嫌だ」「女性として今後どう見られるんだろう」という怖さがありましたね。
島田みゆ(以下、島田):私は自分で胸のしこりに気づいたのが分かったきっかけでした。「良性です」という答えを期待して念のため病院に行ったら悪性だと言われて、本当に驚きました。自分が乳がんだったということがあまりにも想定外で「悪いものがあるならすぐにでも取ってほしい!」と、その時は胸を残したいとはまったく思わなかったんです。
その後、検査を進めていく中で「部分切除も可能」と言われて、そういう選択肢もあるのかと多少迷いましたが、少しでも再発リスクを減らしたい、部分切除後の放射線治療などを考えるとできるだけ負担が少ない方が良かったので全摘を選びました。胸を失う怖さや見た目の問題については自分でも驚くほど気になりませんでしたね。“そこまで頭が回らなかった“という方が正しいかもしれません。
「再建はしなくていいかもしれない」 決断に至った理由
――矢方さんは見た目の問題でも全摘を迷われたということでしたが、再建については検討したのですか?
矢方:再建については医師や母親と相談していました。ただ、どの方法にしても再建は一度の手術では終わらず、時間がかかることを知って。当時はすぐにでも仕事に復帰したいという気持ちが強かったので、時間がかかるのは自分にとってあまりプラスじゃないなと感じたんです。まず全摘だけをして、再建は1年後くらいに考えようと思いました。
そうして1年ほど胸がない生活をしていて、あまり苦じゃないことに気づいたんです。また、番組などでいろいろな専門家の方を聞いていく中で、「再建しなくていいかもしれない」という答えにたどり着きました。
「何で再建しないの」という声もあったのですが、私としては毎日体を見る度にがんを忘れないし、胸のない部分をカバーできるものや工夫できることが分かったので、日々の中で気にならなくなっていました。
島田:私は今、術後約半年なのですが、再建についてはまったく考えていなくて、今後も恐らくないかなと思っています。銭湯や温泉なども、手術した側にタオルをかけて気にせず入ってしまっていますし、普段の生活でもほとんど支障はないと感じています。
矢方:私も再建は考えてないですね。元々自分のためというより、周りの目を気にして再建した方がいいのでは? という思いがあったんです。これから抗がん剤治療で脱毛して容姿が変わってしまうことに加えて胸もないとなったら、この先恋愛もできないんじゃないかと。
ただその時に「見た目じゃなくて、中身を好きになってくれる人が必ずいるよ」「外見だけで判断しない素敵な人は世の中にたくさんいるよ」などとアドバイスしてくれた人がいて、その言葉にとても納得できて。手術して再建した人、再建していない人など、いろいろな方にお会いしてきましたが、再建してもしなくてもご自身がプラスになる選択をされているなと感じます。